黒い太陽、白い月
1
何もする気になれず、一日を教室ですごした。
そのほとんどは机に突っ伏しているか、窓の外を眺めているだけ。
別段、注意してくる根性あるセンコーがいるわけでもないし、授業に出てること自体が珍しいもんだった。
「はい。じゃあ、連絡事項はこれだけ。帰ってよーし」
HRも終わり、生徒達は帰り支度を始める。
俺はさして急ぐ必要もなかったのでそのまま、外を眺めてた。
「晋助、」
「高杉−、ちょっと話があるから一緒に来なさい」
声をかけてきた万斉を遮り、アイツが手招きしているのが見えた。
「万斉、今日はちょっと先に帰っててくれ」
「珍しいでござるな。晋助が呼び出しに簡単に応じるとは」
不思議そうな顔をしてる万斉をさらりと抜け、坂田の後をついてくことにした。
ついたのは準備室。
後に続いて中に入る。扉を閉め向き直ると、机に後ろ手をついてこっちをジッみている坂田と目が合う。
「こっち、おいで」
手を差し出されれば、自然に動いてしまう俺の体。
「おっきくなったね」
すっぽりと抱き込まれて肩口に頭が乗っかってくる。銀髪の髪が頬や首筋の辺りを刺激し、くすぐったい。
「それでもアンタにはまだ届かない」
「やっだなあ、アンタだなんて冷たい言い方。ちゃんと前みたいに呼んでくれる?」
至近距離でニコリと子供のように頬笑み、ほら、と言って促している。
「銀、兄‥ンッ」
呟くような声は途中で封じられた。
少し冷たくて柔らかい唇。
それに反した熱い舌が隙間から入り込み、口内を好きなように動き回る。舌先を吸われ絡まる激しいキスに、飲み干せない唾液が口の端から伝う。
チュックチュッとわざと音をたてているかのようなキス。
ようやく離れた時には悩内の酸素が無くなったかのようにふらついて熱に侵され、たっているのがやっとで知らない間に銀兄の白衣を握り締めていた。
「かわいい、晋助。なに、そんなに感じやすくなってんの。それとも−−−−俺の他に誰かのモノになっちゃったわけ」
細めて伺うその紅い瞳は、きっと嘘をついてもすぐにバレてしまうだろう。
「銀兄は、どっかに行っちまったじゃねぇか。そんなことイチイチ言われる筋合いはねぇよ」
「フッ。言葉の割には声が弱々しいよ、晋ちゃん。一人じゃ寂しかった?自分から誰か誘ったの?我慢出来ないよねぇ、こんな淫乱な体じゃ」
鼻で笑われ、熱くなっている下肢を握り締められる。
その手はそのままズボンを寛げ、中に入って来た。
「あッッ、ちょ、それはヤベーだろ」
「なんで?ココ、何とかしてって言ってるよ。それに−−−−好きでしょ、こんなシチュエーション」
鍵を掛けていない、いつ誰が入って来るかわからない部屋で、教師にこんなことやられてて。
確かに、俺は興奮していた。
「んんんッッッ!」
煽られ、あっという間にその手の中に白濁を放つ。
青臭い独特の匂いが狭い部屋の中にたち込めていた。
立ったままイかされた俺は崩れそうになる体を、銀兄にしがみつくことで支えていた。
「んー、やっぱちょっと薄い気がするなあ」
その声に顔を上げると、俺のがついた手をベロリと舐めている。
「ばっ、や、めろよ。‥‥汚い」
「んー?汚いわけないよ。晋助の美味しいし」
そういって見せ付けるようにすくう、紅い舌先。
それに目が釘付けになっている俺は、蜘蛛の巣にかかったみたいだと思っていた。
一度は前から姿を消したのに、今になってなんともない顔して現れて。
そうして俺をまたからめ捕ろうとしている。
もがいて、助けてくれるのは、誰。
−−−万斉。
思わず思い描いた人物に、そんな訳はないと頭を振る。
「どうしたの、晋助」
「なんでも」
「今日、うちの家、来たらいいよ。いろいろ話そ」
話だけですむんかよ。
そう思いながらもコクリと頷く。
教え込まれたものは、時が経とうが中々と抜けないらしい。
また、捕まった−−−。
その紅い瞳に。
20090803
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