黒い太陽、白い月
再会
「晋助、今日から新しい先生が来るらしい」
「あ?こんな時期にか?あと一ヶ月もしねぇうちに夏休みだろーが」
家にいても面白くないし、学校には来るが、ほとんど授業には出ない。
今日も屋上で同じクラスの河上とのんびり一服していた。
「それは‥‥晋助がこの間脅すからいけないのだ。なんだか病気になったやらでその代わりらしい」
「俺ァ別に脅してなんかいねぇさ。ただ、後ろに気をつけろって言っただけじゃねぇか」
「それを脅すというのだ‥‥」
困った顔をする万斉。
サングラスで隠してはいるが、それでも端正な顔は滲み出ている。
「まあイイ、せっかくきたんならちょっくらどんな奴か見てこよーぜ」
タバコをコンクリの床で消し、立ち上がる。
好奇心旺盛なのはいつものこと。
万斉を連れて、楽しい気分で教室に足を向けた。
***
「坂田先生には二年Z組を担当してもらいます」
なんか神経質そうな眼鏡をかけた教頭が言った。
「え?俺、新任ですよね?!いきなり担任って‥‥適当じゃね?大丈夫なの、この学校」
まだ経験も浅い自分が、進路に悩む高二の担任を押し付けられるなんて思ってもみなかった。
「大丈夫です。Z組は‥‥まあ、少々変わった奴らが多いですが‥‥代理で入ってもらったわけですから。よろしくお願いします。長谷川先生!とりあえず教室案内してあげて〜」
やべー。なんか嫌な予感する。
教室に向かいながら髭面の長谷川先生がいろいろと教えてくれる。
「いやあ、先生Z組は個性的ですからねぇ。いろいろ大変だとは思いますが頑張って下さいね〜」
「どの辺が個性的なんすか」
「うーん、なんか難しいけど、一言で言えばヤミ鍋みたいな感じ?」
「ヤミ鍋‥‥‥すか」
なにいってんだコイツ。
さっぱりわからねぇっつうの。
「まあ、1番気をつけろって言えば、鬼兵隊メンバーですかねぇ」
「鬼兵隊?なんスか、それ」
「いやあ、市内にある暴走族らしいんですがねぇ。血の気が多い奴らばかりで‥‥そのリーダーがZ組にいるんですよ。あーこれこれ。高杉です。前の担任も具合悪く‥‥っおっと。行く前からこんなこといってちゃいけませんね。すいません」
「いや‥‥‥いいですよ。教えて下さりありがとうございます」
高杉‥晋助ね‥‥‥
***
ガラガラ‥‥‥
ドアを開けて入って来た奴に、目を疑った。
−−−なんで、アイツ−−−
銀髪の髪に紅い瞳。
眼鏡をかけて、教壇の前に立つ。
いくら俺の席が1番後ろだとしても見間違えようがない。
「はじめまして−、坂田銀時といいまあす。今日からこのクラスの担任になったんでよろしく−」
担任と名乗るその男は、ざわざわとしているクラスを静めるわけでもなく、出席を取り始めた。
「すぎー」
「高杉晋助−いないのかあ」
ハッと気付くと紅い瞳がこちらをみていた。
「晋ちゃーん、ちゃんといるんなら返事しろよなぁ」
教室がざわめく。
未だかつて俺をそんな風に呼ぶ奴なんていない。
他の奴ならぶっ飛ばすところだが‥‥‥
「うっせぇな。いるのわかってんならいいだろ」
バクバクする心臓を抑えながら、やっと言葉を出す。
「今度からはちゃんと返事するようにね−」
そういって次の名前に移る。
他の奴らが不思議な顔をして俺と坂田を見比べていた。
その目を無視し、窓の外へと視線を逸らす。
目の端に、離れている万斉が、眉間に皺を寄せてこっちを見ているのがわかったが、それも気付かぬフリをした。
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