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■堀鐔学園舞台劇祭〈前編〉

---堀鐔学園舞台劇祭、前日




「サクラちゃん衣装合わせてー!!」
「はーいっ、今行きます!」
「小龍君も来てーっ!」
「…あぁ」



舞台劇祭とは、各クラスが演劇を行い、最もすばらしい劇を行ったクラスが理事長から素敵なプレゼントがもらえる、という堀鐔学園の名物行事。




「それにしても、私たちのクラスはサクラちゃんとひまわりちゃんと、それに…小龍君もいるから敵なしよねぇ〜」
「そ、そんなことないよ!」


近くにいた女子にそう言われ、さくらは頬を赤く染めて否定した。

自分がどれだけ男に人気があるのか本当にわかってないから困る…。



「でも、小龍君がいるからきっと女の子はたくさん見に来るわね。『美女と野獣』」


九軒が微笑んで言う。
俺がいるだけで客が集まるなら安いもんだ。…だけどそうもいかない、きっとアイツだって人気だ。


「それならB組だって小狼がいるだろ?」
「んー…いい勝負かもー」

『ファイ先生っ!!』


教室の中にいる人達が驚いて見た先には窓から教室に入ってきたファイ先生がいた。


「小狼君はーこう母性本能をくすぐる感じ?で、小龍君は…」
「俺は?」
「小龍君は、ホストー!!」


ファイ先生の声に合わせてモコナ達も「ホストだーっ♪♪」と騒ぎ立てる。


…なんで俺がホストなんだよ。


でも女子達も何故かそれに納得し、キャーキャーと騒ぎだした。ああいう雰囲気は、苦手だ。

俺は、その騒がしさから逃げるように教室の隅にいたさくらの方へ歩み寄る。



「人気だね、小龍君」
「…俺は小狼のほうがカッコイイと思うがな」
「えっ!う、うん…小狼君もカッコイイよねっ」


さくらは照れながらも満面の笑みで微笑む。

こういう表情は小狼のことにならないと見れない。



「でも、負けないつもり」
「何か勝負してるの??」

ずいっとさくらに近付く。

「あぁ…俺が勝手に、な」
「しゃっ小龍君…?」


沈黙が流れる。

さくらは、顔を真っ赤にして気まずそうに俺を見つめる。
少なくとも今は、俺のせいでさくらの心拍数は上がっているはずだ。

…つまらない意地。


「…顔、紅いぞ」


そう軽く微笑んで、俺は何事もなかったかのように教室をあとにした。


「どうしたの?サクラちゃん顔、真っ赤よ?」
「なっ何でもないの…っ!!それより!B組のこと聞いた?」
「ううん、何やるの?」
「それがねっ小狼君がシンデレラやるの!!」

「……………小狼君が??」

「や、やっぱ変かな?私は綺麗だろうなぁって思ったんだけど…」
「ううん!きっと綺麗なシンデレラになるわね」
「…うんっ!!」















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「兄さん」



振り返るといつになく不機嫌な小狼がいた。
いつもは優しすぎるほど優しいが、さくらのことになるとそうもいかない。



「お帰り。今日は部活なかったんだな」
「劇祭の前日だからね。…それより、兄さんさくらに何かしただろ」

「…したといえばした」


曖昧な返答をしたら、小狼は大きく溜息をついた。


「…なんか兄さんの名前出す度にさくらが異常に反応してた」
「そうか」
「何かあったか、って聞いても何もない、って顔真っ赤に染めて答えるだけだった」
「…そうか」


最後の「そうか」だけ僅かに口元が緩んだのを小狼が見過ごすはずもなく。


「……はぁ………気に入ったものをすぐいじめる癖、直しなよ。さくらが可哀相だ」
「虐めてるのはさくらじゃない。」



じっ、と小狼を見つめる。



「お前だよ」



「え…?」

「頑張れよ、シンデレラ」




俺は目を細めて笑った。

明日に起こるであろう楽しみを想像して…



「悪いな、小狼。俺も本気なんだよ」






−−−−後編に続く























−−−−−−−−−−−−−−
<あとがき>

長くなりそうだったので、前編後編でわけました。なるべく1ページに収めたかったのでf^_^;

ホントは三人称にしたかったのですが、書きにくさに断念…!結局兄さんに語らせました。でも、自分の中で兄さんは謎キャラなのであんまりやりたくなかったんですけどね…



私は小龍ファンなのでずいぶん贔屓をさせていただいておりますm(__)mごめんなさい(汗)

きっとこの調子でいっちゃいます。後編もあまり期待しないで下さいね・∀・













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