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一緒に幸せになりたいから(F→B)

「死ねよバカガエル」

―グサッ

逃げる間もなくナイフがカエル帽子に刺さる。

「ゲロッ、いきなり何するんですか、堕王子ー」

「堕王子言うなっ」

―グサッ

…また刺された

「ミーだって、カエルじゃないんですけどー。
カエル被らせたのはベルセンパイでしょ?」

「何でお前が霧の守護者なんだよ。マーモンがいた時の方が…」

フランの顔が若干引きつる。
霧の守護者の前任、マーモンの話をすると、いつもはポーカーフェイスのフランの表情が歪む。そんなフランの表情が見たくてワザと言ってみる。


「…そ、ですかー
ミーをただの身代わりとしか思ってない、前任に未練タラッタラの堕王子には少し痛い目を見てもらいましょーか?」


口喧嘩はいつものこと。
だけど、さすがに限界がきた。

少しくらい、センパイに逆らったっていいですよねー?どうせミーは所詮ナマイキなコーハイなんですから。


「……」
悲しそうな雰囲気なフランが目に映る。

「…否定、しないんですかー
わかりましたよ…ミーのいない世界に…連れて行ってあげますよー」

そして、ベルの意識が朦朧としてくる。完全に意識がなくなる直前、フランの目からひと粒の雫が零れ落ちたように見えた気がした。



******




フランは自分のかけた術のせいで床に倒れているベルを担いで、彼の部屋のベッドにそっと寝かせる。

その隣の空いているスペースに腰掛けて、ベルの顔をぼんやり眺める。すると、不覚にもボロボロと涙が出てきた。

「…な、んで…ミーは…泣いて、いる…ので…しょー…か…」

別にこんなことがしたかった訳じゃないのに。自分の未熟さが恨めしくなってくる。

ベルの顔を見るのも辛くなり、そっとキスをして“Ti amo”って呟いて、ちょっと離れたソファーに座る。そのまま気晴らしに読書に浸る。

―ベルセンパイ、ミーのキモチに早く気付いてよ…



******



「…あれ、ここは…?」
…どこ?

フランに妙な術を使われて、一瞬意識が飛んだと思ったら今俺が居るのは自分の部屋。

「本当に俺の部屋なのか、」

不思議に思い、部屋中を見渡す。しかし紛れもなく自分の部屋だった。
違うトコロ、って言ったら目の前にさっきまでいたフランの姿が今の俺の視界に入っていないこと。



取り敢えずフラン本人に何をしたのか問うべく、ヴァリアー内を歩き始める。

そして、この先はフランの部屋であろうドアの前に立つ。ノックをする。
しかし返事はない。
いつものことか、と苦笑してドアノブを回す。いつもなら頑丈に鍵がかけられてて簡単には開かないのに、あっさりと開いた。

中へ一歩踏み出して絶句。
そこにあるのは、殺風景な風景に無造作に積み上げられたダンボール箱。


さっきまで、誰もいなかったような虚無感で溢れている。


名前を呼んでみる。

「…フ、ラン?」



返事はない。
ちょっと哀しくなった。
いくら喧嘩したって、いつもそばにいた奴がいないと駄目なんだ。

仕方がないから、他の幹部の部屋に行く。



「なぁ、スクアーロ…」
「ゔぉぃ?なんだぁ?」
「フランどこ行った?」

「…ん゙?フランって誰だぁ?」

「だーかーら、カエルの…帽子、の…」

だんだんスクアーロの顔がひきつってくる。何言ってんだコイツ、みたいな表情。

「もぅいいや、何でもねー」

「…?ペットならちゃんと管理しとけよ゙ぉ」


ペットじゃねぇし、って思ったけど我慢。だって俺、王子だもん。


その後、他の幹部にも聞いてみる。
が、返ってくるのは微妙な反応。
ボスでさえ知らねー、って言うし。なんか俺、泣きたくなってきた。

ふと、フランの言っていた事を思い出す。

“ミーのいない世界に…連れて行ってあげますよー”

ってことは、本当にここには“フラン”と言う存在がないってこと?

そう思ったら本当に哀しくなって、涙がボロボロ出て、気が付いたらフランの名前を連呼。

情けない。フランがいないだけでここまで取り乱すなんて。

そのまま泣き疲れて、気が付いたら寝ていた。




******




「……ふ…らん」

名前を呼ばれた気がしたフランは、呼んでいた本を投げ捨ててベルの寝ているベッドの横に立つ。

「…ふらん、」

「……なんですかー」

いつも“カエル”としか言わないのに。


そして、そっと術を解いてやる。







「……ん」

「おはよーございますー
って、もう夕方ですけどー」

ベルを覗き込むように話しかけていたら、布団から手が伸びてきて、そのまま抱き寄せられる。

いつもならワザと抵抗したりするけど、今日はそのまま体を預けておく。ムダに術に体力を使って疲れている…。それに偶には素直になってやってもいいかな?


「なぁフラン、どこにも行くなよ、俺の傍にいろよ…」

「了解…ですー
センパイこそ、ミーを置いてどこかに行ったりしないでくださいよ?」




一緒に幸せになりたいから


(Ti amo…ベルセンパイ)
(…バ-カ//)

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