この手は離さない(FB)
―ガチャッ
(こんな時間に誰だよ…)
深夜12時を過ぎている。今日の任務はかなりハードだったから、みんな寝静まっている筈だ。
念のため、右手にナイフをスタンバイするベル。
―ペッコ、ペッコ…
規則的に鳴り響くスリッパの音。
―…ピタ
ベルは目を瞑っているからよくわからないが、恐らく彼の右側で足音が止まった。うっすら目を開けてみると、微かな月光で輝くペールグリーンの髪が見えた。
(あいつか…、)
何をしに来たのかよくわからないが、寝ているフリをしてみる。
フランはそっとベルの布団の右端を捲ると、ナイフを握る右手を見つけた。
「センパイって、こんな危ないモノと添い寝してるんですかー?」
そう言って、手に握っていたナイフを取って、床に投げ捨てる。
かなり小さな声だが、ベルにはちゃんと聞こえていた。何を言ってんだか、そう思ったが寝ているフリを続行する。
―ゴソッ
右側に部屋の冷気が一瞬入ってきた。と思ったら、すぐに人の体温を感じる。
(あ、こいつ…入ってきやがった)
ベルの右手で遊びだすフラン。あまりのもどかしさに口を開く。
「てめぇ、カエル…何しにきたんだよ」
「あ、やっぱり起きてましたかー?」
(いや…どちらかと言うと起こされた)
「ミーの部屋寒いんで、暖まりに来ましたー
あ、寝てていいですよー?」
「…寝れるか
てか…お前、手冷たっ!」
「だから言ったじゃないですかー寒い、って
ミーの部屋にはお金持ちのセンパイと違って、暖房器具がないんですよー」
……
数分後。
やはり手は握られたままだが、フランの手は大人しくなる。どうやらすやすやと、眠りについたようだ。
ベルは握られた手を強く握ってみる。さっきまでの仕返しのつもりで…。
―この手は離さない
(あれ?何でミーの隣にセンパイがいるんでしょー?)
(お前から来たんだろ、馬鹿ガエル)
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