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ぱんどら薔薇
求めるものは(VB)#















君が求めるものは




唯一つの真実










僕が求めるものは




唯、君一人の心












一体どちらが先に




手にすることが出来る?

















(求めるものは)

















地に強く打ち付ける雨。
風で鳴る窓に飛ぶ葉。

今日の天気は、嵐。



「ほら…起きてよ」



僕の部屋の床に座り、俯いているのは
真っ白な帽子屋さん。

その手は長い銀色の鎖に捕らわれ、
僕のベッドの柱へと繋がっている。



「…起きて?」



中々反応しない帽子屋さんの腹部を
爪先で蹴ってみた。



「か…は…っ…」

「おはよう、帽子屋さん」



小さく声を漏らした帽子屋さんに
挨拶をすると、
紅い隻眼を向けて僕を睨んだ。

威嚇、してるのかな。
それとも警戒?



「気分は……どう…?」



僕が問い掛けると、
帽子屋さんは自分の境遇を察して
小さく舌打ちをした。



「…何故私が貴方の部屋に居るのか、
 是非理由をお聞きしたいですネェ…」



帽子屋さんは分かりやすい程
怪訝そうな表情を浮かべている。


君がここに居る理由なんて、
唯ひとつしか無いのに。

決まってるじゃない



「君が好きだから、だよ?」



そう言って、
僕は棚に在った鋏を手に取る。

そして、
其れを繋がれた帽子屋さんの腕目掛けて
振り下ろした。



「…ッう…ああっ!!」



突然の衝撃に、
帽子屋さんは苦痛の声を上げた。

傷上の服がじわりと血を滲ませる。



「…痛い?」

「…ッ…あ……」



呻く帽子屋さんに問いながら、
何度も同じ場所を鋏で突く。


でも傷口が痛みに慣れたようだから、
次は反対の腕に振り下ろした。

すると、またさっきみたいな
苦痛の声が返ってきて。



「帽子屋さんってさー…



次は、脚に。



 ――確かギルの事が好きだったよね?」



その次は、肩に
鋏を食い込ませていく。

冷たい床には、
赤黒い血溜まりが出来ている。



「あ、ぐっ……」



帽子屋さんは、
苦痛に耐え必死に鎖を動かす。

ジャラ、という音が
解放を許すまいと言うように虚しく部屋に響いていた。



「――答えてよ」


質問に答えない帽子屋さんに苛立ち、
顔の横へ勢い良く鋏を突き刺した。

壁に刺さる音と、はらりと落ちる髪。

少し切れてしまった頬からは
紅い血が流れ、
その鮮血は頬から顎へと伝う。


でも、帽子屋さんはその行動に動じず、
紅い瞳を真っ直ぐに此方へ向けた。



「ッは…っ、
 貴方には…解らないでしょう…っ」



…わから、ない?

それって、君にとって僕が其れを
知ることは出来ないって言いたいの?



「――何で



飛び散る血飛沫。
何だか目の前が暗くなる。





 君は僕が嫌いなの…?」

「…ぐ…ああっ……」



気が付くと、僕は彼の胸に
鋏を突き立てていた。


でも、それでも君は、僕を見ていた。
苦しそうに息をしながらも、
僕を見ているんだ。



「誰が…嫌いなん…て、言いました…」



帽子屋さんは、
瞳から涙を流している。



「好…き……でした…よ…っ…」



――ずっと。


少し優柔不断な所も

何時も私に構ってくる時も

無邪気に笑う貴方も

全部。



「何…言ってる、の……?」



君は僕が大嫌いで

何時も鬱陶しそうに見て

僕を煙たがっているのに。


なのに、何で?



「ねぇ、帽子屋さん」



答えてよ

どうして



「起きて…?」



お人形さんにならないで

お願い



「帽子屋さん…っ…」



僕の瞳からは 気付かぬ内に

透明な雫が溢れていて



「ごめんね………」



捕らえていた鎖を外し、
冷たくなった身体をそっと抱き寄せる。

君は何時も何時も
素直じゃないって知っていたのに。


気が付けなかった自分が、
とても悔しく、哀しかった。



もしも時を戻れるなら
僕は君に優しく微笑むから。


だから今は、


自分の罪と向き合わせて。




















(heartlessly)

求めるものは
貴方だった。


















End















+ー+ー+ー+ー+ー+ー+ー+

あとがき


シリアスみたいな感じです´`
ヴィンス様だっていい子です


 



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