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ぱんどら薔薇
聖なる約束に(GB)*

クリスマス小説´`

















雪が降り一層と冷え込んだ冬の夜。
今日はキリストの誕生日を祝う聖なる日、
クリスマスである。


首都であるレベイユの街もクリスマスの聖なる光に飾られ、人でわいわいと賑わっている。

その人の殆どは恋人で、
ある二人もその中で歩いていた。


――何故か結構な距離をとりながら。














(聖なる約束に)












《ギルバート視点》




今俺とブレイクの二人は、クリスマスということでレベイユの街に出掛けていた。

だが、



「……おい。
 おい、ブレイクってば」



ブレイクの様子がおかしい。
幾ら声を掛けても無視するし、



「…何ですか、鴉」



振り返ってやっと返事をしたかと思うと、また直ぐにスタスタと歩いていく。


何なんだ。
俺は何かしたのか。


20分位前まではとても機嫌が良かったし、手だって繋いで、至って普通だったのに。


とりあえず、ブレイクが怒っている理由が分からない俺は、20分前の記憶を辿ることにした。











――時を遡ること20分前。


俺は待ち合わせに30分早く来て、ブレイクを待っていた。ブレイクは時間通りにやって来て、それから街をまわりに行った。


彩られた街には様々な店が建ち並んでいて、どの店も多くの客を集めようと活気立っている。



「賑やかですネー、ギルバート君」

「クリスマスだからな。人も多いだろう」



俺達は人混みではぐれないように、手を繋いで歩いていた。


最初、人混みの嫌いなブレイクはつまらなそうに歩いていたが、いろいろな店をまわる度に楽しそうにはしゃぐようになった。

…終いには引っ張られる程に。



「見てくださいよギルバート君。
 すっごくキラキラしてますねー」

「あぁ、オズとかも喜びそうだ」

「…………」



ツリーの飾り付けを見上げながらながら歩くブレイクに、俺は無意識に微笑みながら言葉を返した。

すると一瞬ブレイクの表情が曇ったが、店の何処からか漂ってきた肉の香りを感じそちらを向く。



「やはりクリスマスですネ。
 ご馳走が普通に並んでます」

「絶対バカウサギが飛び付くだろうな。
 あ、この紅茶なんかシャロンが――…」

「鴉」



途端、俺の言葉はブレイクによって途切れ、ブレイクの表情はさっき迄の笑みとは違い、暗く沈んだものになっていた。



「……いいです。
 もう鴉なんか知りません」



そういうと、繋いでいた手を振りほどき一人でスタスタと歩いていってしまった。


訳のわからないまま置いていかれた俺は、急いでブレイクを追いかけた。







――そして、今に至る訳なのだが。

とりあえずふり返ってみたものの、全然原因が分からない。


遅刻したわけでも、相手をからかってもない。無論、野外で如何わしい事をしたわけでもない。


なのにどうして。


そんな風に考え事をしながらブレイクを追っていたら、いつの間にかすっかり相手を見失っていた。


まずい。
怒らせた上にはぐれただなんてシャロンに知れたら、あのハリセンの餌食になってしまう。

それに、こんな寒空の下に放置なんてしたら風邪をひいてしまうかもしれない。


一刻も早く、ブレイクを見つけ出さないと。















《ブレイク視点》




あの能無しワカメ頭。
本当にあり得ない。


せっかく二人きりで、しかも今日はクリスマスだというのに、オズ君やらアリス君やら、他の人間の事ばかり楽しそうにベラベラと。


こうなったら一人ででもクリスマスを楽しんでやろうじゃないか。

私は空気の読めないワカメを置いて、一人で街をまわることにしたのだ。



大嫌いな人混みを避けながら歩くが、気付くと街の路地裏に来てしまっていた。


確かに人で混むことは無いが、夜なだけあり結構暗く、明らかに「危ない」というのは自分の経験上よく解っている。


だからほら、



「おい、こんな所で何してるんだ?
 綺麗なお兄さんよ」



やはり直ぐにこういう野蛮で不躾な輩に集られる。
けれど、こういう状況は他何度か遭ったことがあるので、奴等みたいな人間のあしらい方は解っている。



「おや、せっかくのクリスマスに一人とは、
 随分寂しい方ですね?」

「お兄さんだって一人じゃねえか。
 こんな所彷徨いてるってことは、
 絡んで欲しかったんだろ?」

「勝手な妄想ご苦労様です。
 何だったら精神科行きます?
 …あ、整形外科の方が先ですね、ゴリラ」



此処まで言えば、大概の馬鹿は怒りで頭に血が上って殴り掛かって来る。

其処を私は「正当防衛」だと言って、何時も切り捨てるのだが、



「口が達者だな、お兄さん。
 そんなに遊んで欲しいのか?」



私の予定と反しこの挑発にちっとも乗らず、野蛮ゴリラはにやりと気品0な笑みを浮かべると、振り返って何も無い所に向かい手招きをする。

すると、何処に隠れていたのか野蛮ゴリラの仲間らしき人間が数人現れた。


野蛮ゴリラ達は、私を囲むと一人は後ろから私を羽交い締めにし、残りは私の目の前で気味悪くにやついている。


しまった。
こんな状況になるとは、
予測がついていなかった。



「な…っ………!?」

「さぁ…、楽しませてくれよ?」



目の前の野蛮ゴリラは衣服を剥ぎたいのだろう、私の服に手をかけ始めた。

ちらっと開いたシャツの隙間から肌が冷たい外気に晒され、男達の手などからもひやりとした感じが伝わってくる。



「…っ…触、るな!!」

「大丈夫だって。
 直ぐに気持ち良くなるからよ」



そう言うと男達は私の肌をするすると焦らすように撫で、汚らわしい舌で味わうように胸の飾りを舐め回される。



「…ん、や…ぁ……っ…」



嫌だ
気持ち悪い。



「…なんだ。可愛い声出るじゃねぇか。
 誘ってるのかよ?」



気持ち悪い。



「ひ…あっ………」

「随分女々しい奴だな。
 実はお前、淫乱だろ」



助けて。
お願いだから


助けに来て



「ッ…ギルバート………っ…!!!」



男達が私のズボンにまで手を掛けた時に、一発の銃声が路地裏に響いた。



「…ブレイクっ…!!!」



















《ギルバート視点》




街を人通り回りながら進んでいると、声が聞こえた。

俺の名前を呼ぶ、
ブレイクの声が。


声の方向を辿り道を行くと、ブレイクの周りには知らない人間が何人か居て、囲む様に立っている。


遠くからでも分かる。
ブレイクの瞳には耐えるようにいっぱい涙が溜まっている。

その怯えた表情はとても見ていられなくて、気付いた時には、相手に向かい銃を放っていた。


幸い誰にも当たらなかったが、
威嚇位にはなったようだった。

俺の構えている拳銃を見て驚いているのか、男達の表情はひきつっている。



「ブレイク…っ…!!大丈夫か?!」



俺は男達に拳銃を向け、目で「退け」というように促せば、ゆっくりとブレイクに近づく。



「…ぎる……ギルバート…っ…」



安心したのかその場にへたりこむブレイク。

そんなブレイクを見て安堵の溜め息を吐くと、まだ立ち去っていない男達の足下に数発弾丸を放つ。

すると流石に拳銃は危ないと考えたのか、未練を残すように此方を見ると、足早に立ち去っていった。



「ブレイク…、もう大丈夫だから。
 離したりして悪かった…」

「……そんな事、
 謝って欲しいんじゃありません」



落ち着きを取り戻し、衣服の乱れを直しながら立ち上がったブレイクは俺を真っ直ぐ見据えると、きゅっと抱き着いてきた。



「……二人で居るときは…、
 居るときだけでいいですから、
 



顔を上げ、覚悟を決めたような表情で俺を見上げ、



 ……他の人じゃなくて…私だけを、
 …見ていて、ください………」



―ギルバート。


最後にそう呟くと、さっきの事での安心からなのか透明な滴で俺の上着が濡れた。


なんだ。
そんな事気にしてたのか、こいつは。
そんなの、
当たり前だっていうのに。



「……大丈夫。
 ちゃんと、お前だけを考えてるから。
 だから、安心しろ」

「………本当、ですね」


そっと抱き返してやると、ブレイクは二人の間を無くすかのように擦り寄ってきた。

二人の体温でとても暖かく、相手の命の鼓動が聞こえてくる。



「本当だ。…約束、する。
 だからお前も、
 絶対に夜一人で何処かに行くなよ」

「…何処の父親ですか。
 ……あ、…雪……」



ブレイクは身体を離してふと上を見上げると、雪がはらはらと花弁のように降っているのに気がついた。



「…ホワイトクリスマス、ですね」



ニコリと笑い呟く淑やかで純白に透けるその相手と、白く透き通った雪がとけ込んでいる甘美な情景を目の当たりにした俺は、


思わず、



「……綺麗」



と、口に出してしまった。

だが俺の言葉を聞いたブレイクは雪のことだと思ったらしく、同意するように小さく頷いた。



「……さぁて、と…っ…」



ブレイクは背伸びをして俺を見据えると俺の片手を取り、ニコリと微笑めば一言。



「…デートの続き、しましょうか?」



言葉を言い終えると、まだ同意すらしてない俺の手を引きながら路地裏から出て、輝きに満ちた街の表通りへと戻ってきた。



「…あまり引っ張るなって」

「大丈夫ですって。
 何も腕が抜けるほど引っ張る訳じゃ
 ないんですカラ」



屁理屈を並べるブレイクの何時もと変わらないけれど、何処か嬉しそうなの笑みに、何だか此方までつられて微笑んでしまう。



「ほらほら早く行きますヨ、ヘタレイヴン」

「名前にくっ付けるな、名前に」



俺の返答にクスクスと笑い、また何時もの調子で俺をからかいだす。


本当にもう、こいつは。

まぁきっとそんな所にも、俺は惹かれたのだろうけれど。


俺はブレイクを引き寄せると、行き交う人々の中を構わずに、ゆっくりと唇を重ねる。

離すと目の前には、顔を赤らめて少し怪訝そうな表情を浮かべながら、上目遣いで見つめている恋人。



「クリスマスプレゼントだ」



小さく耳元で呟くと、更に顔を真っ赤にして目をそらされた。



「……ヘタレの癖に、…卑怯ですよ…っ…」










ヘタレなサンタからの贈り物は、
貴方へのめいいっぱいの愛で。












(Hory promise)


聖なる夜は
素敵な約束を。
















End






+ー+ー+ー+ー+ー+ー+ー+

あとがき


Merry X'mas!(^ω^)ww
…まぁ完成したのは
クリスマスの2日前ですが←←
今まで一番長いと思われ

ギルは人の気持ちに
かなり疎いと思います。
そしてヘタレです。


なんか中盤変態ちっくに
なりました何故だろう(←
そして何時もに増して
文が意味不明orz


あきゅろす。
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