[携帯モード] [URL送信]
[PC視点]アカマガツイベント纏め2 再調査〜終結
☆逮捕

ファルベリア=シュヴァロットは逮捕された。そして終身刑として、遠い街へと移された。

二年の時が流れる。事件は風化していく。全ての真相自体は明らかにならないままに。ファルベリアが襲撃を仕掛けた自警団詰め所での件にて命を落とし掛けた自警団員、フィリスト=レガリスの隠蔽が引き摺られ、真の赤禍ツの存在が証明されず、そしてファルベリア自身がその罪を認めていたが為に、解決とされていた。全ての罪を受け止めると。弁解など、無かった。

その二年の間、ただ聖書を読み耽った。自身を助けてくれた神父に近付こうとした思いも、その行動原理を知ろうとも、何故生かしたのかを知ろうともしたのもあり。そうして二年の歳月を経て、神は生きている者の神であるという言葉の一つに辿り着く。

そして、それとほぼ同時期。再調査という名目で事件の起きた街、ペティットへと移された。何故この時期なのか、何故このタイミングなのか。再調査計画者はギトルーザ=ザムド=ゼルナフォート、そして、監修者がフィリスト=レガリスだった。仮の名、ヴァイスを与えられた意味合いさえも知らぬままにペティットの詰め所の牢獄にて過ごす事となる。
初めてそこで会ったのは、獅子の獣人であった。与えられたのは、金の十字架。そして、親友であるセシリアが結婚式を開くという情報。何故自身の事をそこまで知っているか、そんな疑問など吹き飛んだ。続いて出されたのが、表に出てみないかという誘いであった。償いとして永遠に牢獄に残る筈であったが、裏庭は申請次第で囚人にも開放されており、気分転換にでも、と。
そうして、ヴァイスとして初めて陽の光を浴びる事となる。




☆裏庭にて

移されてから、一週間後。裏庭へと初めて出てくる。自警団員であるショウイに連れられて来たそこは、ラクリモーサの作り出した舞台の場であった。入念に計画されていた脱獄計画、アイザックを騙し、悪魔とさせギルバートへの交渉要素として枷の鍵を手にし、この牢獄を抜け出す為の。二年越しの、再会だった。自身が知っているのはその修道女、何を成すかは即座に理解出来た。取った行動は、赤禍ツとしてでのものではなく。ギルバートへと銃を借りる交渉を経て手にしたそれを、向ける。
結果は惨敗、そして脱獄を赦した結果となった。二年間牢獄の中に居続けたその圧倒的なまでもの戦力差が引き起こした敗北であった。

それを見ていたのは、獅子の獣人。力を付け、備える為に外で鍛錬を行うのはどうか、と。警備の目は厳しくなったが、それでも無意味ではない事、何度も戦い抜いてきた身体を慣らすのにも、運動にも最適だと。ヴァイスはその言葉を飲み込み、鍛錬をその日以降繰り返した。たった一人で、奇異の目で見られようとも、ただひたすらに。

だがそんな中、ヴァイスにも思惑があった。親友の結婚式というものを見たい、というエゴ。その為に何が成せるか。この牢獄を合法的に出る方法はと。
それはそもそも、確実に無理な問題であった。重罪人、大量殺人鬼として存在する自身に更生の余地は無く、証明の手立ては無い。更に、この再調査は四月末までという期限付きのものであった。証明がされるであろう再調査は、進展というものが存在せず、そもそもこの再調査の意味合いが不気味な程に不明瞭のままであった。

故に、前と同じく。卑怯な手立てとして外に出る手段として誰かを利用する計画を立てる事とする。この再調査を利用し、牢獄に居る自身が再調査を動かし、そして自身を道具として扱わせ外へと出る手立てを。
標的としたのは脱獄事件における二人、アイザックとギルバートの二人であった。自身とセシリアの様な、絶対的な信用を持った二人と確信していたからこそ、その二人へと目を付けたのだった。どちらでも良く、会った一人目に全ての計画を語ろうと。

そうして会ったのは、ギルバートだった。自身の有用性を提示し、飼わないかと。とても図々しく、都合の良い話だった。それを償いとして見ろ、という様な。しかし相手からの返答は呆気に取られるもので、この街の為に力を使いたいのか、というものだった。ただ利用しようと考えていた計画、しかし相手は真に街を守る為、「自警団に協力する立場になりたいのか?」と勘違いしていた様だった。脱獄事件の事もあり、そう思う要素は確かにあった。が、その意志に間違いも、なかった。この街だったからこそ今の自身がある事は確かであり、そして関わってくれた者を守るという立ち位置に償いとして、恩返しとして立てるならそれが最良であるとも。しかし、この段階では不可能という結論にて終幕した。この時点では、大量殺人鬼であるヴァイス─ファルベリア─には何一つが不可能でしかなかった。

その後、ヴァイスを言葉にて助けてくれた神父との面会に通される。獅子の獣人が監視に付き、牢獄越しの会話となった。結婚式の為に人を利用したいという思いの言葉を紡いだ事から今の自身の思いである街の為に力を使いたいという事さえ、懺悔する様にも、全て。そして改心の手助けをしてくれると語ってくれた。何一つの計画も未だ、そこには無くとも。

考え、思い付かなければ言葉を交わしながらも見付け出せばいいとギルバートと共にベンチで思考する。大まかな計画は、自身の二度と殺さないという証明を再調査の元に見付け出す事。その為に必要なのは物証。過去の資料、掲示板の内容から導き出したのは、フィリスト自警団員が物証を隠蔽し保有している可能性があるという憶測。憶測は憶測でしかなく、結論として不明瞭のままだった。

何故再調査が計画されたのか、何故事件を知られた不味い筈のフィリストが監修者となって自らの名をヴァイスと変えたのか。再調査は何故進展しないのか。過去の物証は存在するのか。その全てを判明させる為に、ギルバートはフィリストの居る港の倉庫街詰め所へと殴り込みに向かう計画を立てる、が、神父がそれを耳にしており即座に阻止、酒場にて相棒であるアイザック、物証を知るユベルティ、そして自警団員二人の先輩に当たるバートレット、その場に居合わせたマクナーリア、改心の手伝いをすると言った神父が酒場に集まり殴り込みではなく調査の一環としてその真相を探る計画を立てる。




☆倉庫街詰め所調査

決行の日。計画としてはバートレットの提案した上層部からの抜き打ち調査として、その詰め所を洗いざらい調査すると言ったものだった。怪しいロッカーを前に言葉での攻防、駆け付けるユベルティ、セシリア、エレナカレンの三人の証人。展開されるソードサモナーの領域型攻性術式に、許可の言葉を盾とした神父の、ロッカーへの一撃。雪崩た、筋肉用品。
そのロッカーはフィリストの見られたくはない過去が詰まっていた様子だった。ロッカーの奥へと眠っていたのは、二対の白黒剣。元凶、ゼルサリス=プロスメギテルスの扱っていた物証であった。三人の証人によってそれが本物であると判明し、フィリストが隠蔽を認めた。現在は殺意が無く、再調査される事で筋肉大好きな趣味が判明するのが嫌なだけだったと。調査を分かりにくくする為に偽名を付けたのもあり、真実が判明しようがしまいが、罪人には変わりないだろうと切り捨てる言葉と共に。だが、それは一瞬にて物理的に打ち砕かれる。

振るわれたのは、神父には見覚えのある黄金の槍斧。一撃でフィリストを気絶させたのは、獅子の獣人、再調査を計画した本人、"ごわごわさん"と、ヴァイスそしてギルバートへ言われていた自警団員、ギトルーザ=ザムド=ゼルナフォートであった。

真実は簡単なものだった。再調査という名目で呼び出された真相は、妻を殺された復讐を果たす為以外の何物でもなかった。
それだけでなく隠蔽関連にすら関与しており、死したゼルサリスと接触、飴の情報を習得し殺意を二年もの間、赤禍ツとして宿し続けていたのだった。妻を殺した血塗れの足で街を歩かせるならば、即座に殺すと言い残し、血の様な禍々しき色を移した尾を翻しその場を後にした。




☆第三の赤禍ツ

調査が成果を成した事により、五月末まで再調査は継続された。それでも別件の問題が浮上した事実を、見逃せはしなかった。

計画の全貌は判明した。結婚式の話から、裏庭へと出させ、脱獄事件の後に厳重な警備へと変わった裏庭にて鍛錬を持ち掛け徹底的に周囲の警戒を置かせる。その上で、手合わせとして正当防衛を盾に一撃で殺す。死刑囚である重罪人の死、脱獄を計画していた者として、自身の業物を奪おうとしたでも監視である自身を殺そうとしたでも言い訳は付く。この街に呼び出し、裏庭という環境があったからこそ、そして誘い出せるべき状況が二年越しに漸く出来たからこそ計画されたものであった。そして、娘が居たからこそ罪を深く被らぬ復讐が必要でもあった。

その点で、フィリストを突かれた点にて既に詰みでもあった。二度と殺さないという証明が確定したとなれば正当防衛が確立せず、自らが罪に問われる事は必須であった。だが、今更に引き下がる事は出来なかった。普通の者なら服用し二つ目の術式を完成させ赤禍ツの呪いが展開した場合尋常ではない殺意に襲われ誰彼構わず殺す殺人鬼となる、その様な飴を二年間服用し続け、この時まで心にて押さえ付けていたが、神父の言葉にて殺意が爆発した。 復讐を遂げさせてやる、との言葉に。

深夜の暁の草原にて、神父と対峙する。神父が行わせる復讐とは、その復讐する相手の大切な者を奪う事。何一つの手出しをさせずに、居なくならせる事。その言葉には納得があった。既に判断として壊れていたのかもしれなかったが、それでも構いはせず。一度命を助けた相手へと絶対的な殺意を向け、殺す為に刃を振るった。鮮血が舞い、槍が腹部へと穿たれ、額は割れ。それでもただ復讐を遂げさせるとして神父は戦い続けた。
死を目の前としても、娘を、妻を泣かせるなと。覚え続けていると。例え誰が忘れようとも。言葉が掛けられ、黄金の槍が振り上げられ。だがその端から赤禍ツの呪いが崩壊していく。積み上げた憎悪と殺意が、ただ全てを失った悲しみだけを残して、赤く禍々しき色は消えた。
自身の行いは、全てを泣かせるだけの行いでしかなかったと。神は生きている者の神、過ぎる想いは、ヴァイスへと渡した十字架の、意味。復讐は、絶望的な悲しみの中、失敗に終わった。そしてある意味の、憎悪と殺意の全てを喪った完遂として。

一命を取り留めた神父との再会を果たしたギトルーザ、そしてバートレットが星見公園へと集まる。そこで最終確認が成される。飴の所在、在処と製造場所、そして二度と作られないという事を。その要素を明確化させ、神父が提示したのは、全ては囮調査であった、という事。
危険物作成及びその使用による危険性の軽視、危険物流失の可能性の軽視、その危険物に置いての民衆への配慮不足、自警団員としての軽率な判断行動、自警団の信頼失墜の可能性。並べ立てられたそれらは事件終焉の手柄として、ギトルーザからバートレットへと渡された事によって覆された。誰も殺す事がなかった赤禍ツとして、死闘は喧嘩として処分され、赤禍ツの事件は、この瞬間全ての呪いが消滅し、完結したのであった。




☆要望

調査は、完了した。ギルバートが提出した資料と調査書にて全ての真相が明らかとされ、飴は全て葬られた。二度と誰も殺さない証明という名で生まれた調査書、それを抱えて、対峙するのはバートレット、そして猛虎隊隊長アレクサンドラ。
神父の要望は、ヴァイスを監視の元に街を守る刃として償いの一環とする事。全ての自由を殺し、牢よりも酷く、存在さえ殺し、自警団の不利にもしてはならない、償いを霞めさせてはならない、被害者を、犠牲者を無視してはならないという要望として。呪いの危険性さえも危惧され、剣の証人として、呪いの証人として集められた者達が言葉を交わす。守れるに値する有用性、そして、信頼性。絶対は無い、が、もしもが起きたとしたらという可能性は捨て切れない。決まらぬ処遇に、神父の揺るがぬ要望。

猛虎隊の判断として預かられて終わる寸前、神父のもう一つの要望として出された言葉は、結婚式の話。全ての切っ掛けであり、目標でもあったもの。頭を下げ、ただ我儘としての言葉を紡ぐ中、善処するとの言葉でその場は、終わった。




☆処遇

処遇が決まったとの連絡を、受けた。手紙はたったの一言。朗報をお届けします、との事だった。
結婚式は、出席出来るという朗報だった。自身を助けてくれた恩人の、そして親友の晴れ姿を見届ける事が許された事、今までの長い時間を想い、深く頷いて。
続く言葉は、街を守る刃としての、制約。失敗は許されない、人としての権限の全てを奪われた武器として、人権の全てを排除された猟犬としての。間違えれば、即座に死を与える呪い。そして全ての監視にてその行動を許すというものであった。自警団の刃として、凶悪犯を穿つ凶悪犯として。

要望を通すには、人としての存在を消失させなければならなかった。助けた命を、失わせる可能性すらあった。全ての意思を、生かしてくれたセシリアを、ギガトールを、そして生きてこそ償えると改めて言ったギルバートを裏切る事になる可能性も。

それでも、頷いて。また自身の様な者が現れた時に、捕まえる事で助けてあげられるような、自警団の刃として。


胸の十字架を緩く握り締めて、二年振りの街へと歩みを進める。



多くの罪を背負い、幸せを見届けながら、街を守る為に。



真っ白な尾を靡かせて。






[前へ][次へ]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!