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・11/04/28 酒場 encounter:ジョージ/ソラ

ソ     あ
  ら


         り

何だろう、暗号だろうか。ダイイングメッセージになっていなくて良かった。片手にこの手帳を持ったままベッドに横たわっていたが、こんなの書いた覚えも無ければ記憶が無いのに何故家に着いているのかさえ分からず。有り得ない仮定に過ぎないが誰かが連れていってくれたとしても、赤い花だらけのこの貸家に誰かを連れてくるなんて常識的に考えて無い。どうにか自力で帰った様だ。けれど、違和感が取れない。何だろう。

記憶を整理しよう。

謎の審判行為。何だろう、凄く張り切っていた気もするがあまり思い出せない。

酷い頭痛だ。何故だかエッチ紳士という言葉とあの犬獣人の顔が浮かんだ。これは記憶の合致として確定だろう。彼はエッチ紳士だ。確か、十代で大人の階段を登ったらしい。
何だか嫌な記憶も思い出してきた。エアおっぱい。何だっけ。


ああ、私か。(←異様な筆圧)

              が

記憶は薄くて思い出せる事は少なかったが、楽しかった事だけは確かだ。不快よりも圧倒的に。
こう馬鹿騒ぎ出来る様になったのも、単に師のお陰でもあるのだが。私が師に出会った最初の時は、本当に何も喋らず、そして泣きながら、また笑いながら命を奪う機械だとさえ言っていた。伝えられたのは、その盗賊団で暮らして幾らか年を重ねてからだったが。
その盗賊団は馬鹿しか居なかった。生きる事自体が笑わせる為に生きている様な人達で、デストロイあっち向いてホイ(※1)や暴力じゃんけん(※2)など訳の分からない事を毎日していたっけ。そうして、次第に本当の意味で笑うようになってきたんだ。その辺りから審判役を抜擢された気もするが。
           と

今の私を形作った人達は、もう居ない。あの馬鹿みたいに笑わせてくれた人達は、私が赤い花とした。
奪って、殺したんだ。けれど、その人達が居て、下らない事で笑い合えた日々を忘れたりはしない。忘れてはならない。

私が今持ってるのは、本当に、心から笑う事の出来る力だから。





(※1)
デストロイあっち向いてホイ(所構わず突然開戦し、あっち向いてホイに負けた場合その方向へと一切躊躇わずに全力で30m駆けるという恐怖の遊び。ついでに上の場合は前へ、下の場合後ろへ全速力で30m駆ける。主に火事現場の近くを通り掛かった時や海の近くや建物の屋上などで唐突に行われる。壁があろうとも問答無用に全速力で突っ込まなければならない。その為、危険そうな場所と前後左右には最大限の警戒を張る事を余儀無くされる。危険がありそうな場所を向く習性を突いた遊びであり、何もない場所を見極めその方を向くとしてもそれを狙われる事もある為、裏を読む必要がある。そして一回毎に一瞬のポジションチェンジの隙が与えられる。ミスると身体がデストロイする、そんなあっち向いてホイである。)

(※2)
暴力じゃんけん(「泣いたら負けよ、暴力じゃんけんじゃんけんぽん!」で開始する恐怖のじゃんけん。開始の刹那にお互いが顔面へと片手で全力の攻撃を仕掛けるという、ルールと言えるのかさえ不明なルールを持つ。各々の手の形の性能としては、グーは鉄拳制裁であり命中精度は普通だが一撃の威力が高く安定。パーはビンタであり鉄拳制裁には威力が劣るも面積がある為に命中精度に優れ、クリティカルとなる独特の乾いた音が響けばダメージが大幅に上昇する。チョキは命中精度と攻撃力共に最低ではあるが、更に精度を落とすも最強一撃必殺であり第一ラウンドから相手を泣かす事を可能とする恐怖のダブル目潰しを繰り出す事が出来る。手の形の何が出ようとも全てあいことしてカウントされ、血塗れになろうが骨が折れようがどちらかが泣くまで続けられる。始めに断っておくべきであったが、じゃんけんのグー・チョキ・パーによる勝ち負けはこのじゃんけんにおいては何の意味も成さない。)


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