[携帯モード] [URL送信]
・11/04/04 川 encounter:セシリア
恐ろしい。私自身こんなに恐ろしいと思ってもみなかった。

あの後他の街で料理の本を買ってきて、早速セシリアに言われた通り基本に忠実に、基礎からやっていこうと思い簡単なチャーハンから作ってみようかと考えが至ったまでは、大丈夫だった筈だ。

食材を揃え分量も確かに載せられた通りのものを準備し順調に、と言っても大した段階も無く呆気なくも終わるのだろうと考えていた。セシリアの言う通り楽しめれば、という所に観点を置けば、誰と共に食べる訳でもなく、テストの意味合いで。

しかし多分、あの時が原因だったのだろう。料理本の通りに進めていって、ネギのみじん切りをしている最中に気付いた事。

何で犬獣人の私がネギなんて食おうとしているのか、と。

そこから一気に壊れてきた。味が足りなくなると危惧して味付けに更に何を足すかと考えれば咄嗟にそのレシピに無いマヨネーズやらオイスターソースやらタルタルソースやら、挙げ句にみりんや砂糖に酒と、今からお前は何の混沌を産み出す魔術食品を作ろうとしているのかと誰もが咎めかねない事態に発展した。

味見しつつ、とのセシリアの言葉が無ければ現在テーブルの上に載っている炒め飯は食する事すら不可能となっていただろう。味は少し濃いが、それでも最低限マトモなラインは越えた出来だ。

流石に、酒を入れて火柱がキッチンに立ち上った時はそこに終焉を見た気さえしたが。

料理は初、という訳ではないが久々にした。妙な達成感も楽しみの内の一つなのだろう。物凄く溢した塩コショウも、みじん切りされたまま残ったネギも、焦げた天井も、味見のし過ぎで六割消えたチャーハンも、マイナス点は少しオーバーだけれど、それでいい気がしてきた。

少しずつ、少しずつ、覚えて行けば良いのかな。いつかは、人前に出せるものを。そしてかなり遅れた夕飯を。




お互いに、許せたのかな。でも、そうじゃないんだ。全ては夢魔のせいじゃない。


私は、まだ君に嘘をついている。


[↓old][new↑]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!