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・13/02/12 森 encounter:ミツキ/レウ/ラーベシス
腹一杯だし満足だ。この街に来てそう日数は経っていないが、これで二度目のニンジンフルコースだ。幸せ。

昨日の事を思い出す。この街へ辿り着くより少し前、俺の剣はクヴェールに辿り着く直前で邪竜に破壊された。まともな鍛冶屋を見付ければ良かったのだが、その時所謂裏商人の一人に会ったらしい、俺は。柄から分断され刃の半分が無くなった剣は修復されたが、俺の要望を捻くれた形で叶えた剣は、クヴェール出身の商人、ミツキにはやはり粗製とは分かったらしい。だろうな、といった所だ。

俺はあの森の中でこの剣を、そして死霊術士のレウとやらに貰ったこの闇色の水晶球の力を確かめようとした。結果としてはその負の力、死を望む力を具現し破壊を齎した。加減などある筈がない、言った通り、それなりの悪霊が込められていたという事だ。
力の大きさに比例して俺の柄を握る右手への影響も大きい。右手は血を滴らせた。そこを、ミツキが見ていた所だった。かなり驚いていた様子だったが、そんなに俺が怖そうに見えたか。ミツキは俺と同じ黒い長耳を持つ黒兎の獣人で、そして素晴らしいツッコミの持ち主であった。耳に関しては、エレナカレンも同じ兎の黒耳だったか。

遠目に見えたのは、水晶球を俺に残したレウだった。俺の扱い方を知ってもどうという事は無いだろう。貰えたなら使い方は自由だ。オデットに貰った属性球はまた別の意味合いを持っていたが、負の感情を渦巻かせる死した者の水晶球ならば、その通りに使ってやるまでだ。生を、正を喰らい散らせばいい。

そんな話をしている中、魔狼の亡骸が飛んできた。分かって投げ込んだのなら悪趣味であろうが。そしてミツキが物凄くビビっていて俺の後ろに隠れたりと、やっぱり悪趣味かもしれない。
と思ったら、知っている声だった。俺の耳はまだ衰えてはいないだろうから正解か。髪と、そして片腕、露天風呂で会った時とは違って勿論服を着ていたから別人の様にも見えたが。レウの霊が視認出来るという札で気付かされたが、彼女に良く似た母がすぐ上に浮いていた。軽く自己紹介したが、多分普通に見れる機会ってのは無い気もする。

俺の右手の痛みは確かに重かった、が、他人に世話を掛けて貰うくらいに重い訳ではなかった。それでも気に掛けてくれたミツキ。悪い気はしないのだが。
貿易商兼メカニック、クヴェール育ちは伊達じゃないか。俺のラスカノスに関しても色々分かる様子で俺自身も言葉には納得がいった。俺がクヴェールで買い忘れ、懐中時計と方位磁針が欲しかったと言ったが、懐中時計に関してはミツキが趣味で作っている域であった。買うか買わないかではなく興味があった為に手の治療ついでに寄らせてもらって、色々見させてもらおうと思っていた。この段階ででは、だが。
結局の所、ニンジンフルコースや水道からニンジンジュース出るだとか、帰り道が分からないだとか様々な理由でお世話になる結果だったが、俺は俺で楽しめたのだから良かったのだろう。今度また人参煎餅でも作っておくか。

警戒しておくべき名も二つあったか。ミツキを襲ったというのはダークシルフ、二匹の蛇が剣を咥えている刺青。あと、ラクリモーサと言ったか。詰め所から脱獄したのは。一応覚えておこう。


俺が森で迷うのは、最初に此処に来た時に分かったものだ。あの時はフランチェスカとリディアが居たから助かったが、やはり未だに分からないままだった。けれど、森を完全に知らない訳ではなかった。レインとの会話、あの中で思い出した里は、森に囲まれていた。だが一切入った記憶も出た記憶も無い。それこそ無い、のではなく思い出せないのかもしれないが。
そもそも、思い出せないのが俺にとって重要な要素なのか。火は恐ろしく苦手だが、それも原因が分からなくて。そんな事が、その二つが重要だというのだろうか。俺の理由、その根源。思い出す、意味は。懐かしい、けれど、何処かとても不安になるような。

レインの言葉は頭から離れない。「この街の人間を扇動し、お前をどこまでも追い詰めて必ず殺してやる。」という言葉を。レインの名は、ミツキは知っていた。天秤に乗せた時、俺は、あのセシリアという女を殺す覚悟を持ったとしたら。
嫌なものを敵に回したな。けれど、俺は。それでも殺すんだろう。誰にも理解されなくていい、他人は俺で、そして俺から見た者の全ては他人でしかない。

けれど、やっぱり複雑だ。知れば知る程に、あの酒場でだって、他でだって。

その為に理由を求めなければならないのだろう。俺はその理由を見出だした果てにどちらの選択をするのか。


腹が筋肉痛だ。あのやろ、尻尾弄るのは反則だろうが。けれど相当笑った。料理も美味かったし、それにあの精巧な機械細工の数々には本当に楽しませてもらった。方位磁針を買うのには金を惜しまなくても良いと思えたが、同胞としてのサービスに甘えたりハリセン食らったり、そして懐中時計を貰ったり。

俺はこの重たさを、天秤に掛けれるのか。

その覚悟が、あるのか分からない。


帰りに見ながら歩んだ方位磁針が、こんなに、こんなにも重いとは、思いもしなかった。



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追記

ポケットにチョコ入ってたああああああああ!!!はっははは!ざまぁみろミツキッ!俺は義理チョコを貰った、今年はちゃんと貰ったぞーっ!
けれど、帰る間に別に誰にも会った記憶は無いんだよな。よく分からねぇ。でもこれは確か結構人気の生チョコレートだった気がする。誰がくれたか分からないが、きっととってもシャイなんだろうな。魔法で俺のポケットに入れたのならエルフだし、もしかしたら俺の動体視力を超越する速度で入れたのなら獣人だろう。それともそれとも何だかこれも記憶に無いけどって展開なのか!?
くくく、でもこれでミツキにどんなもんだって言えるところだ。ってか、本当に誰だろうなぁ。いつか分かるのかなぁ。

いやぁっほぉぉぉうッ!バレンタイン、最高ッ!!!


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