君の、
手に誘われる
寝ろよ、と言われたので私は立ち上がった。
出夢もベッドの端へ移動したので私は何の疑問も持たず、ベッドに入ろうとした。
「...なぁ、」
出夢が手招き、
俗にいう、おいでおいでをしていた。
「...何?」
「来い、って」
「え」
そう言って、導かれたのは出夢のとなり。
少しだけ強引に座らされて、気づいたら出夢の腕の中。
「!...い、出夢...?」
「なに照れてんだよ」
「照れてない...し」
とくとく、と規則正しく脈打つ鼓動。
聞こえているのが自分のものなのか、はたまた出夢のものなのかは
分からないけれど、心地いいのは確かで。
すぅっ、と眠気がやって来た。
「これで僕が隣にいてもぐっすり眠れんだろ」
「...」
眠くて、もはや返事をするどころの騒ぎではなかった。
出夢が先にベッドに入る。
それにならうようにして、私も布団に潜り込む。
「おやすみ」
出夢は私の額に一つキスを落とすと、部屋の電気を消した。
私はただ、夢とも現とも分からないような今を
温かな体温に誘われて漂っている気がする。
出夢の手が、私のことを夢へと誘った。
prev
[戻る]
無料HPエムペ!