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おかしいおかしいおかしい。
俺の計画では今頃、愛しの彼女と付き合っている予定なんですよ。なのに、なんで俺は今フリーなんでしょうか。そしてなんで愛しの彼女はあんなにモテているのしょうか。

リンさん!なんでですか?







ウラハラ!







俺の想い人は厄介者だ。
何が厄介かって、モテるんですよ異常に。
いや、異常ってのもおかしいか。モテる理由は十分に判るんだ。顔は可愛いしその上愛想も良くて、優しいんだ。そんな彼女に微笑まれたら誰だってノックアウトされてしまうと思う。俺もそんな中の一人で、物心付いたときから気になってしょうがない。
その想い人―――鏡音リンは俺こと鏡音レンの幼馴染で小さいころからよく遊んでいた。その点他のなんの関わりのない奴らに比べたら俺とリンの距離は確実に近いし、何よりリンの男友達といったら俺くらい。だからずっと安心していたのに…!思春期のガキどもめ、中学校に上がった途端リンの魅力に気がついたらしい、リンに言いよるようになってきた。
最初のうちはまだ安心していたが学年が上がるにつれ段々不安も大きなものになってきた。…なんか、こう、急に可愛くなったっていうか、いや、昔から可愛かったんだけどさ、大人っぽくっていうのかな。可愛さに磨きがかかって、焦った。女の子の成長は早いっていうけど、こう身近で起こると納得せざるえない。

まあそんなこんなで言い寄る男は多かったもののリンは誰とも付き合わず(本当に良かった!)中学校を卒業した。
俺とリンは同じ高校に進学することになったが、その高校も比較的男子の多い高校だ。リンはモテるから油断など出来ない。
そこで俺はあることを閃き、実行に移した。


「どうしたの?急に」


コンコン、と窓を叩けばリンはカーテンから顔を覗かせ窓を開けた。俺とリンは二階に部屋があり隣同士のため、屋根を渡れば簡単に行き来出来る。
入っていい?と聞けばリンはいいよ、と笑って窓を全開にしてくれた。オレンジ系統でまとめられた部屋はいかにも女の子、という感じで未だに慣れない。
俺はリンのベッドに腰掛ける。リンは自分の勉強机の椅子に座ると俺と向き合うように方向を変えた。


「めずらしいね、こんな時間にくるなんて」


時計を見ればまだ18時。いつもは20時過ぎに行くから珍しいっていえば珍しいかも。って、そんなこと思ってる場合じゃない。早速本題に入らなければ!


「今日はリンに渡したいものがあってきたんだ」


こういうとリンはとても嬉しそうな顔をして「え!なになに!?」と目を輝かせた。…そんな顔されると、うん、上げるのが後ろめたくなるんだけど…いや、これはリンのため!そして俺のためでもある。パーカーのポケットに手を突っ込み、袋を渡した。
ガサガサと嬉しそうに袋を開けるリン。
出てきたものは…


「メガネ?」


リンは不思議そうな声を上げる。そう、俺はリンに眼鏡をプレゼントした。それも、黒ブチの凄く大きい眼鏡。所謂アラレちゃんみたいな形のやつ。



俺の計画はこうだ。

高校に上がったリンは俺のあげたダサダサ眼鏡をかけて登校。
   ↓
当然ダサい女の子として扱われ、男は言い寄らない。
   ↓
リンがしょんぼりする。
   ↓
そこですかさず俺登場
   ↓
「しょうがねーな。俺が付き合ってやんよ」
「レン!大好き!」
   ↓
リン、メガネを外し登校
   ↓
レンの彼女可愛くね?!なんであんなに可愛い子気付かなかったんだろう?!ウラヤマシス!
   ↓
俺ウマ(^p^)end




問題はリンがその眼鏡をかけてくれるかどうかだ。リンの反応を窺うと未だに不思議そうに眼鏡を眺めている。


「でも、リン、目悪くないよ?」

「大丈夫、伊達だから!」

「だて?」

「うん、リンに似合いそうだなーって思って買ってきたの」

「ふーん?」


リンは未だに納得いかなそうな顔をしているが、ありがと!と言ってくれた。ああ、なんて可愛いんだろう。


「それ、高校にかけてってね」

「え!?学校に!?」

「…だめ、かな?」


折角買ってきたのに、と言いたげな表情と声色でリンから目をそらすと、「かけていくから!かけていくから落ち込まないで?!ね?」と慌てて俺を宥めるリン。優しいなぁ。


「じゃ、そういうわけだから!」

「う、うん」


こうして入学式。俺の隣にはあの眼鏡をかけるリンの姿。
思ったよりダサくない気がするんだけど…気のせいか。
元がいいから仕方ないんだろうな〜とかぼんやり思っていると…



現状が出来上がります。



俺のあげた眼鏡は予想外の効果をもたらしたのだ。


ダサ眼鏡リン、高校デビュー
   ↓
オシャレメガネが流行中らしい
   ↓
リンのってオシャレメガネだよね?
   ↓
よく見たらピンとか小物も可愛いよね。
   ↓
スタイルもいいし制服着こなしてない?
   ↓
あれ?顔、めっちゃかわいいじゃん
   ↓
リンがオシャレで有名に  ←いまここ




ど う し て こ う な っ た



おかしいだろっ!雑貨屋であのメガネを見かけたとき「これだ!」と閃いたのに、あの俺の喜びはなんだったのだろうか。まあ、リンが人気者なのは嬉しいけれど…。
はあ、と溜息をつきながら次の授業の移動をする。
次は体育。バスケだから体育館に移動しなければいけない。遠いし、着替えと移動で休み時間がなくなってしまうからリンと会えないし、最悪。長く歩くのもタルいし、近道をしようと思い校舎の裏へ回る。ここを通ると丁度体育館の裏に出て少し距離が縮まるのだ。
角を曲がろうとすると、人の話し声が聞こえたので立ち止まる。

(こんな所に誰だ…?)

気になり顔だけひょっこり覗かせると見覚えのある黄色い頭。
…リン?何やってるんだと思い角度を変えて見てみると奥の方にはリンと同じクラスの男の姿があった。2人の服装と現在地からして前の時間は体育だったのだろう。
会話の内容が気になり、耳を澄ませる。


『ごめん、いきなりだったよね』

『ううん、ありがとう。嬉しかったよ』


どうやら雰囲気を察するに目の前の男がリンに告白して振られたようだ。俺はホッと胸を撫でおろす。そろそろ出てもいいかな、と一歩足を踏み出そうとすると、男が突然大きな声で『鏡音さんはさ』と言うのでビックリして俺の動きはピタリと静止してしまう。なんだ、まだ続くのか。


『その、好きな人とか…いるの?』


その質問に、俺は動きだけでなく思考までフリーズ。
そういえばリンに言い寄る男を払い除けるのに夢中で、リンの好きなやつのことなんて考えたことなかった。…そうだよな。それも考えなければいけなかったよな。
ドキドキしながらリンの言葉を待つ。

―――いない、って言ってくれ!



『…いるよ』

『そっか、ありがとう』

『ごめんね』

『気にしないで。じゃ、先戻ってるから』

『うん、また教室で』


俺の方向とは反対方向に走ってく男。こっちにきたらどうしようとか、そんなこと考える暇もない。
リンに好きなやつがいるって…一体誰だ!?中学校の時にカッコイイって言ってた先輩か?それとも可愛いっていってたあの後輩?いやいや、同級生にも何人か男の名前が出てきたことがあったぞ!もしかして高校にはいってから?そういえば生徒会長イケメンだったよな?いや、不細工だったかな?あんまり覚えてないけど生徒会長ってイケメンのイメージだよな?それともリンのクラスの委員長?女って権力に弱いのか?!


「…レン?」


ぐるぐる回転する思考の中、聞き覚えのある声がしたのでハッと我に帰る。顔をあげればそこにはリンの顔。


「あ、…。」

「もしかして…聞いてた?」


困ったように笑うリン。
…やっぱり、俺に聞かれたくなかったのか。


「ごめん」

「や!全然いいんだよ!いいんだけどね!」


ブンブンと胸の前で手を振るリン。

(かわいいなぁ)

でもそんな可愛いリンにも好きなやつがいて、そいつにはもっと可愛い姿を見せるんだろうなぁ。俺にも見せたことのないような表情で笑うのかな。
告白なんてしなくても、今見たいな関係がずっと続けばいいなんて幻想だったのか。続くわけねーんだよなぁ。ぜったいに。
胃がキリキリと締め付けられる感覚。
これが"失恋"ってやつなんですね。


「あ、レン!今日放課後空いてる?」

「空いてるけど、なんで?」

「買い物付き合ってほしいの!」


新しいアクセが欲しいんだ!そう言って笑うリン。
いつもなら「いいよ」って返すところだけど、今はそんな気分になれない。今日買うやつだってリンの好きなやつに可愛いって思われたいから買うんだろ?俺はそんな恋愛に協力出来るほど心の広い人間じゃない。


「一人でいけば?」


あ、俺今最低なこと言った。
思ってたことも最低だけど、今の言葉はもっと最低だ。
リン、絶対今の言葉は傷ついたと思う。

急いで顔を上げれば案の定複雑そうな表情をしたリン。
「ごめっ」と慌てて言うがリンの目は段々潤んできて、ついには泣き出してしまった。


「ごめんっ、リン。今のはそんなつもりじゃ…」

「ひっ、…ふっ、じゃっ、…なん、で?」

「リン、好きなやついるんだろ?だったらそいつに言ってついてってもらえばいいじゃん」


リンは可愛いから喜んでオッケーすると思うけど。
こういうとリンは余計に泣き出してしまった。
一体どうしろと言うんだ!


「うっ、なんでっ、ひっく…わから、ないの??」

「…え?」

「レンのばああぁぁかああぁぁ!!!!」

「なっ、ばかっ、て」

「ばかばかばかばかばかばか!!」

「っだぁ!何なんだよ!さっきから!」


いい加減俺もイラついてきた。
なんなんだよ、さっきからバカバカって!確かに俺はバカだけど、リンには言われたくない!
大体、俺なんかと買い物いって万が一その"好きなやつ"に目撃されたらどうするんだっ!そいつのために物を選ぶのは癪だが、リンが不利になるような行動は一切避けたい。リンが好きだからこそ嫉妬もするけど、それ以上に幸せになってほしい。その相手が俺じゃなくても、リンが幸せならそれでいいと思うし…。
ああっ!本当に俺にどうしろと!?


「じゃあ聞くけど、好きなやつって誰なわけ?俺が話しつけてきてやる」


こうなればヤケクソだ!これでリンの気が治まるならそれで手をうってやる!
リンの手首を掴み、校舎へ移動しようとすると、突然手が振り払われた。さっきからなんなんだ、と文句を言ってやろうと振り向けば


「お前だ、ばああああああああああか!」


と叫ばれた。


「は?俺?」

「リンは、ずっとレンしか見てなかったんだからああああ!」


何か凄く嬉しいことを言われた気がするけど。
気のせいか?


「……って、俺!!???」

「何よっ!レンに振り向いてもらいたくて中学校のときから頑張って化粧も覚えて、部屋も女の子らしくしたのに!まあぁぁぁぁったく気付いてくれないし!メガネだって嬉しかったから似合う格好とか化粧とか勉強したのに、レンはなんか残念そうな顔ばっかするし!今だって怒ってわけわかんない!」


泣いた後にベラベラと叫んだせいか、リンの息を荒くして胸を激しく上下させている。俺はリンの言葉が嬉しくて顔が赤くなってしまった。


「…ごめん」

「それは、…何に対しての謝罪?」

「全部」


未だにぼろぼろと零れるリンの涙を親指で拭い、俺より一回り小さい身体をぎゅっと抱きしめた。
こうするのは何年ぶりだろう。とても懐かしい。前は同じくらいの背丈だったのに、高校生となった今では顔つきも、背丈も、体つきも、随分と変わってしまった。


「俺、怖かったんだ。気持ちを伝えたせいでリンが遠くにいってしまったら、と思って。可愛くなったの、気づいてた。でも普通幼馴染じゃ素直にそんなこと言わねーよ」

「うぅ〜…っ」

「好きだよ、リン」


抱きしめる力を一層強める。
リンの身体がピクリと反応したのが判った。

キーンコーンカーンコーン、と響く授業開始のチャイム。それはまるで俺らを祝福する鐘のようだった。











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ウラハラ!(うらはら!)
リクエスト「リンレン レンのやきもち」

妄想日和 (にさ)
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