2000Hit記念 笑えと言う※ さっきから涙で前が見えない。ごしごしと顔を拭うけれど、止まらない涙を拭いたって意味はなかった。 やけに彼が大きく見えていた。私が縮んだのか、いや縮んでなんかない。私の前では被らないあの大きな通信機、カエルのせいだ。 「ってか泣きすぎでしょー」 「っ…馬鹿」 「話し掛けたそばから馬鹿扱いですかー、これだから馬鹿は困ります」 はぁー。気だるそうにため息をついたフランは、また私にお決まりの台詞を聴かせる。髪を撫で撫で、子供をあやすみたいに。 「…3日で帰りますから」 「…」 違う、フランは帰ってこないんでしょう、私は知ってるんだ。そう言いそうになったが、飲み込む。 ボスとフランが話しているのを、聞いてしまったんだ。また霧が消えるのか、残念だ、って、ボスは、言った。 霧は消えても何処かにいるのが霧なんです。ミーが消えたら前任が帰ってきたりしてー、なんて彼は言っていた。 ほら、思い出したらまた涙が止まらない。 フランは変わらず私の髪を撫でる。このままずっとずっと、撫でていてくれたら、私は泣かなくて済むのに。 「早く笑えよちくしょー」 言わなきゃね、お別れを。 「次はいつ会おうか」 「そうですね、来来世くらいにしておきますか?」 笑えと言う、泣くことしか出来ない私には拷問のようなこと 来来世の私はきっと笑顔が素敵なの。 original[笑えと言う(泣くことしか出来ない私には拷問のようなこと)] . |