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天使は悼む
誰かの為に






きっかけはただの休暇退屈しのぎ。

某路線某駅某改札口。パスモをピッとした後、ミーは雑木林へと足を運びました。何か隠れている気がしたんです。幻覚を見破った?ちがうちがう、直感なんですこういうのって。


杉の木ばかりがそびえる林。きっとこれ、春になったら花粉症の人入れませんねー。ま、普通はこんなところ入らないか。

そのまま歩みを進めれば、視界が開けて小さな丘の中腹に辿り着きました。更に登ってゆくと、丘の頂上にひとりの女の子がいます。



「…あれ」

「なんですかー」

「あえ、いや」

「相当びびりますねー」

「だって、ここは」

「一般人には見つからない、踏み込めない場所だからね?」

「そう、よ」



整然と並ぶ墓に手を合わせたままミーに顔を向けた彼女。しばらく固まって、それからもう一度墓に向き直ると数秒目をつぶり、それが終わるとミーのところへ寄ってきました。



「始めまして、幻術師さん」

「始めましてー、埋葬使さん」



お互いに素性が明らかになっているのが笑えますよね。ミーは確かに幻術師ですし、彼女は多分埋葬使です。そうそう直感、貴女も大分物分かりの良い人間ですねー。変態雷オヤジなんかよりよっぽど。



「どうして、ここへ?」

「暇つぶしに電車に乗ってここまで来たら、珍しくバリアを張った気配がしたものですからー来てみたんです」

「やっぱり分かりやすいんですか、ね」

「や、ミーがたまたま分かっただけですー」



あっれー、変ですねー。

彼女には色がないみたいです。ミーは目をこらして彼女を見ましたが、どうしても、彼女の髪色が何色だとか、着ているワンピースがどんな柄だとか、分からないのです。無色という訳でもありません、不思議でした。



「幻術師さん、素敵なエメラルドグリーンね」

「どーも」


そちらこそ素敵な無色具合ですね、とでも言ってやりましょうか?馬鹿みたいなのでやめました。


「何故、私が埋葬使だって、分かったの?」

「…秘密ですー」



まさか、こんな場所でこんな人と出会うなんて予想だにしてませんでした。彼女の正体を教えて欲しいですか?…嫌です。楽しみは後にとっておきましょうー。



「それにしても、小さな墓場ですねー」

「そう、ですか?」

「ああ、あなたは通常の墓場を知らないんでしたっけ」


ぽつりぽつりと建てられた墓たち。横目で順に見ていくと、ミーにも知った名が刻まれていました。一昔前、おこりんぼのボスに粉砕された奴の名でした。



「ここには、存在を否定された人たちの」

「存在を否定?」

「…実体が眠っています」



それを管理するのが、埋葬使の使命です。実際は埋葬なんかじゃなくて、実体使って感じですかね。

白蘭さんは、ここの場所からラジエルさんとオルゲルトさんを無理矢理連れていったんです。まあ結局、粉砕されたようで…3年経ったら戻ってきました。



「南地点の襲撃はあなたが元凶でしたかー」

「まあ、そういうことも有ります」



この埋葬使はやけに寛容でした。
一度ここで保管された実体は、威力が実際より数分の一カットされてしまうから、一度埋葬された実体が満足に暴れることはないだろうと彼女は言います。



「誰の為にも、最良の選択だったんです」



堕王子の兄貴やごつい執事に倒されたと思われたミーたちの立場ねーし。誰かの為って一体誰の為なんですかね。



言えば埋葬使は曖昧に笑います。



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あきゅろす。
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