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嫌なことを思い出した、とメロはその端正な顔を歪めた。

もっとも目深に被った帽子からその表情を読みとることは出来ないのだが。


思えばあの時すでに兄の様子はおかしかったのだ。
しかし幼かった自分はあの笑みの意味を考えなかった。

否、考えようとしなかった。


「(あれに気付いていたら違う未来があったのかな・・・)」



沢山の人が行き交う中歩きながら悶々と考えるが、何時だってその答えはでない。
所謂堂々巡りだ。


結局あの後、メロを含む家族は引っ越しの途中謎の事故にあった。
メロの父親であるチャールズ・スチュワート氏は死んだ。
一家の大黒柱を失ったスチュワート家は裕福な暮らしから一変、厳しい貧乏生活を強いられるようになった。
そして頼りの兄はあの謎の笑みを残して行方不明。
もともと身体の弱かった母に経済力は皆無で下の兄弟たちはまだ幼い。
そんな状況でメロが仕事にでるのは必然。

半年前から職に就いた。
安全は保証出来ないが、報酬は確かである。
そうして彼女は借金取りになる道を選んだのだ。

これが彼女、メロ・スチュワートの事情である。





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あきゅろす。
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