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その少年には少しの秘密と深い事情があった。

まずは秘密から。
少年の名前はメロ。しかし少年は少年ではなかった。
ある事情から少年であらねばならない状況になってしまったのだ。
少年もとい少女メロは。

その事情というのは話せば長くなるのだが、簡単に言ってしまえば彼女の職業のためだろう。

彼女は借金取りだ。

まだ16歳の彼女が何故そのような物騒な仕事に就いているのかというと、理由は彼女の過去にあった。

彼女の家は裕福で、まるで貴族のような暮らしをしていた。
父と母、優しい兄に可愛い兄弟。
なに不自由無い生活。
しかし悪夢は起こったのだ。







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――9年前――

『準備は出来たか?アーカー。』

窓際に設置された椅子に腰掛けながら、碧眼の男―チャールズ・スチュワートが側に立つ青年に声をかけた。

『ええ。いつでも出発できます、父上。』
アーカーと呼ばれた青年は特に表情を変えた様子もなく答えた。

『そうか・・・母さんはどうだ?』
スチュワート氏はその豊かな口髭に手をやりながら聞く。

『具合は相変わらずですが、今は辛うじて安定しているようです。』
アーカーの表情は尚も崩れない。

『なら今すぐにでも出るべきだな。』

『・・・はい』

『下の兄弟たちにも伝えてくれ。』

『承知、致しました。』
アーカーにそう頼むとスチュワート氏は立ち上がった。

『・・・どちらへ?』

スチュワート氏は椅子の側のサイドテーブルに手をかけ、飲みかけのコーヒーを口に含んだ。

『あぁ・・・母さんのところに行ってくるよ。』

『左様でございますか・・・』

『それでは後は頼んだぞ。』

そう言い残してメロ氏は部屋を出て行った。

アーカーは暫くメロ氏が出ていった扉を見つめていた。
そして今まで自分の父親が腰掛けていた美しい装飾のついた椅子に触れる。
まだ温もりの残るそれからは自分の父親のもつ確かな温度を感じた。

『“父さん、か・・・』


アーカーが小さく呟いた言葉は誰に届くこともなくただ宙に浮いて、やがて消えた。





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あきゅろす。
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