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「まあそういうわけだ。残念だったな。」
店主の答えを聞いて満足そうに笑う彼を見て、メロは色々と力が抜けた。
―――何時だってそうなのだ。
自分がどんなに意を決して踏み出しても結局彼には届かない。
無意味なのだ。
ここまで進歩が無いと逆に笑えてくる。
きっとこれからも終わりのないいたちごっこは続くのだろう。
彼が生きて、自分が生きるかぎり。
ガタリ、と音をたててクロスが席を立った。
言葉通り金は1ギニーだって置いていかなかった。
メロがクロスの後を追って店から出ようとしたときふ、と後ろを振り返ると店主は泣きながらクロスの使ったグラスを片付けていた。
「(高かったんだ・・・お酒・・・)」
そんなこと微塵も考えずに悠々と歩くクロスを訳も分からず尊敬してしまった。
「(こんなに自分勝手に振る舞える人っていたんだ・・・)」
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