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カランカラン



扉についた鐘が小気味いい音をたてた。
一歩足を踏み入れると強烈な酒の臭いが嗅覚を襲った。
周りの客たちの目が一斉に自分に向けられる。
メロはこの感覚が好きではなかった。
自分が無関係の余所者だと暗に言われている気がするからだ。
メロは気を紛らわすように帽子をかぶりなおした。


「よぉ、ボク。こんなトコに一人で何の用だ?」
パパでも迎えにきたのか?と、酔っぱらった客がへらへらと話しかけてきた。
それを切っ掛けに周りの客も一斉に口を開く。



可愛い可愛いボウヤ。こっちにおいで!楽しいお話をしようじゃないか!
いやいや、こっちにおいで。イイコトを教えてあげるよ!きっとボウヤも気に入るだろう!


下卑た笑いがうっとうしい。
これで男装していなかったらと思うと背筋が凍った。
男装していなかったら間違いなく自分は今ここに五体満足では居られなかっただろうから。


そんな恐ろしいことを考えながら歩を進める。
向かう先には最早見慣れてしまった真っ赤な神父。
彼は心底愉快そうにこちらを見ていた。



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あきゅろす。
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