発言するなら挙手をしてから1人ずつ
ピッ
ピッ
ピッ
ピッ
…終わらない。
もう嫌だ。
さっきからずっとピッピッやってるけど終わる気配が全くない。
もういいよ。
ただでいいから。
頼むから早く持っていってくれ。
｢お前、それでよくクビにならないな…｣
｢…俺ってそんなに分かりやすい顔してますか｣
｢今のは口に出てた！｣
にこにこしながら頷く女性。
あ、そうすか…
なんてため息。
｢幸せ逃げるッスよ！｣
｢…そうッスね｣
なんでこんなに疲れるんだろう。
そんな疲労困憊な俺を余所に客2人は喋り続ける。
｢あ、ねえここのコンビニにじゃないっけ｣
｢何がッスか？｣
ピッピッ
｢静ちゃんがよく行くとこ！｣
｢あー！そうッスね！確か此所ッスよ！｣
ピッピッ
｢じゃあ静ちゃんと仲良しな店員さんってさ、｣
｢！｣
じーーー
急に会話が途絶えた。
それと同時に俺の手も止まる。
熱い視線に穴が空きそうだ。
しかしだからといって顔をあげたくない。
なにこれ拷問？
｢…な、なんですか｣
そんなものに耐えうるほど俺は強くない。
あっさり白旗を降って顔をあげた。
そうして見えたのは子供のように無垢な視線を送る客2人。
キラキラしてる。
好奇心いっぱいといった感じ。
そんな風に一身に見つめられて困っているともう1人のお客さんが見かねて口を開いた。
｢…あー、悪い｣
｢いえ…というかあの、何で見つめられてるのかだけ聞いてもいいですか？｣
｢｢！｣｣
あれ？駄目だった？
なんか輝きが増した気がするのだが。
｢静雄さんのお友達ッスか!?｣
｢静ちゃんとイチャイチャでラブラブですか!?｣
｢は、｣
え、同時に喋らないで欲しい。
わからなかった。
若干わかりたくなかったのもあるけど。
｢…重ね重ね悪いな｣
｢いえ…通訳だけお願いしてもよろしいですか？｣
疲れた顔をして頷いたこの人とはなんだか分かり合えるような気がした。
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