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カオスの予感(ほぼ確定)


そんなこんなで突入した夜。
俺はいまだにコンビニにいたりする。
昨日の今日で家に帰り辛いってのは解ってほしい。
マイスウィートと言うほどスウィートでもないホームでは今でも怒り冷めやらぬ鬼がいるのだ。
それも二人。
どう考えたって鬱だ。

ここまで色々振り返ってみたけどなんかもう思い出すのもアレなくらい俺って不憫じゃないか。
何か悪いことしたっけ。
昨日から怒濤の展開過ぎて当事者のくせについていけてない事態だ。
だって、店長だろ、兄さんたちだろ、きだくんだろ。
まあ途中あんりちゃんというオアシスがあったけどもそれを差し引いてもやっぱり怒涛の不幸が一身に降りかかって(むしろ振り掛けられて)いると思う。
俺は誰かに恨まれでもしているのだろうか。


と、ここまで悶々と一人考えを巡らせていた俺は気付きませんでした。


俺の顔にかかる前髪と首筋に貼り付けられた不自然な絆創膏を不審な表情で見つめるとある人物の存在に。



「・・・それ、」


「あ?・・・あぁ、平和島さん。こんばんは。」


いつのまにか背後に立っていたバーテンさん基平和島さん。
俺は雑誌の整頓をしている手を止めて体ごと振り返った。

明るい金髪にサングラス。
そしてトレードマークのバーテン服。
何故か眉間に皺が寄っていることに疑問を感じたが、いつも通りの風体に俺はなんとなくほっと息をついた。


「お会計ですか?」


返事はなかった。
平和島さんはただまるで解せぬとでもいうように胡散臭げな目で俺を見つめる。
むしろ俺を、というより俺の前髪をガン見してるような気がする。
と、何時にも増して理解し難い平和島さんであるのだが気まずい沈黙が暫く続いた後漸く彼は口を開いた。


「…ピンは?」


…まあこう言われるのはなんとなく予想はしてた。
会う度に確認してたもんな。
なくなってたらそりゃ気になるわ。
でも奪われたなんて答えるのもなんか悪い気がするしどうしたものか。
というわけで、


「お、…落とした?」


嘘を吐いてみた。
が、


「…いや、俺に聞かれてもな」


苦い表情で返されてしまった。
嘘を吐くとき疑問系にしてしまうのは素直な俺の悪い癖だ。
しかし平和島さんはそんな俺のわかりやすい嘘をそれ以上追及することはせず、少し間を置いてから口を開いた。


「まあ、予備ならあるが」


「是非ください」


邪魔過ぎる前髪を鬱陶しく思っていた俺は平和島さんの言葉にこれ幸いとばかりにパッと手を出した。
しかし俺の手がヘアピンを掴むことはなかった。
平和島さんは出された俺の手を華麗にスルーしたのだ。
あれなんかデジャヴじゃね?

赤いヘアピンを持った指が眼前に迫る。



「よし!そこでそのままぐいっと引き寄せてちゅーよ、静ちゃん!」


「…」


「…」


「軽いちゅーでも萌えるけど深く濃ゆいちゅーして七瀬くん腰砕けとかもすっごい萌えるってゆうか燃えるうぅぅぅ!」




…いつから此処にいたんだこの人は



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あきゅろす。
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