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知らないほうが良いことだってある


「…あ、それ…」


「はい?」


「あの、首…大丈夫ですか…?」


「あ、」


今まで黙っていた女の子が口を開いた。
問われた内容はこの上なくそっとしておいてほしいものであったがこの娘は心配してくれているのだ。
そう心配を。
そして思い出す。
この絆創膏に隠されたモノの原点。
始まり。
おりはらいざや。
かつてきだくんが懸念し、俺に警告してきた男。


「…これは、」


「…七瀬さん?」


俺と女の子とのやり取りを見ていたきだくんとりゅうがみねくんは言い澱む俺に怪訝そうな顔をした。


「…きだくん、ごめん」


「、」


俺が一言だけ、そう、溢すときだくんは全て理解したようだった。
見開かれた瞳が陰る。


「…じゃあ、それ…」


「…うん」


結果として俺はきだくんの親切を無駄にした。
俺は関わってしまったのだ。
例えそれが俺の意志に反することだとしても。
まあ俺としては野郎につけらたキスマークなんざノーカン扱いだから特に気にするところでもない。
でもとりあえずは風呂の修理費と磨り減った精神の慰謝料ぐらいは支払ってもらいたいものなのだが。


「怪我はそれだけですか」


「ああ。まあこれも怪我ってほどじゃありませんけどね。」


「立派な怪我じゃないですか!いくら小型といえどナイフは凶器っすよ!」


ああ。
そりゃちっさい果物ナイフだっていざとなったら人を殺める凶器にも為りうるだろうさ、って


「…ナイフ?」


「…あれ?ナイフで切りつけられたんじゃ…?」


「…いやいやいやいやいやいや…」


きだくんがナイフ、と口にした瞬間りゅうがみねくんと女の子の表情が強張った。
ほらみろ物騒なこと言うから。


「え!?じゃあその絆創膏は!?」


「あーっと…」


これ言うべきか?
純情な少年少女たちには刺激が強いんでない?
しかも通常の男女関係ならまだしも男男関係だからね。
更に言うときだくんは俺に想いを寄せているらしいしこれぶっちゃけたら色々不味いんでない?

というわけで、


「うん、まあ気にするほどのことじゃねーですよ」


誤魔化した。


きっぱりと言い切る俺にきだくんは複雑そうな顔をしながらもりゅうがみねくんと女の子同様、あえて追及するような真似はしなかった。





ちなみにあとから聞いた話、眼鏡をかけた女の子の名前はそのはらあんりと言うらしい。
女の子の名前はきちんと覚える主義なので俺は忘れないようにあんりちゃんの名前をしっかり脳味噌に叩き込んだ。





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