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バラ撒かれた災い その@


静かな嵐が去った後残された俺に訪れたのはまた新たな嵐だった。

おりはら襲来事件(さっき命名)の後、俺に降りかかった火の粉は火の粉なんていう可愛らしいものではなかった。
むしろ火炎放射だった。
まじで死ぬかと。
そんな全身重度の火傷を負った現在の俺が可哀想な過去の俺を悼みつつ色んな人の反応を振り替えってみたいと思う。


まずは店長。
おりはらが上機嫌で去った後呆然としていた俺に一番最初に声をかけたのは彼だ。
店そっちのけで呆ける俺に注意しようと呼び掛けた彼は俺のはだけた襟元と赤い鬱血をみて顔色を変えた。
流石に警察、と騒ぎ出した時には焦った。
いきすぎだ、店長。
まあ全力で心配してくれた点では感謝してるけども。


次は同じ血を分けた兄さんと弟。
一番心休まるはずの家が恐怖の対象となることは俺にとって珍しくはない。
基本的にバイオレンスな家族しかいないからな我が家には。
俺なんていつか家爆発するんじゃないかと割りと本気で考えてたりする。
実際風呂場が何度か爆発した。
しばらくは銭湯通いだったのは今となっては良い思い出、
…でもない。
まあその話は置いといてだな。
改めて言わせてもらえば今回ばかりは恐怖ってレベルじゃなかった。
まじで、怖かった。
社会人として働く兄貴は定時きっかりで帰ってくるけじめ人間。
嫁さんもらったらきっと良い旦那になるよ、兄さんは。
家庭に仕事は持ち込まないからね。
しかも家事全般得意だし。
どーよ家の兄貴、嫁、じゃねえ婿にもらってかない?
あ、いらない?
そうすか残念。
そんなわけで俺が帰る時間には家で主夫な兄さんが夕飯作って待ち構えてるわけだ。
自分で言うのも虚しいが家の兄弟は皆俺至上主義。
そんな俺の首にキスマークなんかつけられて帰ってきた日にゃあ、
…考えただけで恐ろしい。
二度と外に出してもらえないかもしれない。
バレたら死ぬくらいの気持ちだ。
俺は何時もより五月蝿い心臓を無理矢理押さえ付けて深呼吸をする。
そしていざ、と玄関の扉をあけた。
ただいまの声が心持ち弱々しかった件については俺を責めないでほしい。
だってこわいんだもん。
びくびくしながらも2階からおりてきた弟を交えて食事をする。
会話しながらも頭の中ではいつも通りに、という言葉が呪文の様に繰り返されていた。
そのかいあってかその後も順調に過ごすことが出来た。
何日か経てば痕も薄くなるだろうから2、3日の辛抱なのだ。
少し軽くなった気分に浮かれながら俺は食事の後風呂場に向かった。
忌まわしい真っ赤な所有印を全力で洗ってやらなきゃ気が済まない。
舐められたしな。
あ、鳥肌。


、なんて呑気に考えてた俺は完璧に油断していたのだ。


嗚呼、ここから先思い出したくない




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あきゅろす。
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