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存外リアリスト


「死んだら、か…」


素直に想像してみる。
どうなるのだろう。
ぶっちゃけて言うと俺は天国というものを信じていない。
宗教だって今までの俺の先祖がみんなそうやって生きてきたから甘んじて受け入れているだけで心持ちとしては無宗教だ。

そもそも天国というものは生きている人間が死に対する恐怖から逃れるために創られたものだと俺は考えている。
死んだ人間のためじゃない。
それに実際に死んだ後どうなるのか、或いは何処へ逝くのかというのは誰にもわからない。
何故なら死人には死んだ後のことを伝える術がないからだ。
その上死んだら何処かに逝くという概念すら合っているのか定かではない。
魂の消滅が正しい死の形という可能性だって存在する。
だから俺は


「…夜、目を瞑って」


「…?」


「いつの間にか朝がくる」


きっとそれと似ていると思う。


寝ている人からみれば自分が目を閉じて開くまで時間の流れは感じられない。
まるで瞬きのような一瞬。
死ぬってことはその一瞬の無意識状態がずっと続くということだと思う。
意識も時間も朝も夜も自分さえも何も関係ない、全てから解放されたある意味一番自由な状態なる。
それが死ぬこと。


「つまり、ノンレム睡眠の状態みたいなのが永遠に続く、みたいな。だから何もわからない。ただきっと気付かないうちに何もなくなるのが死んだ後のことだと思う」


「 」


「これで満足ですか?」


「…」


やけくそになって捲し立ててやったらなくらと名乗った男は考え込むようにして黙った。
例え彼にとって俺の答が異質で気に食わなかったとしてもそれはもう、知るか。
俺には関係ない。
あ、でもこれもしかして新手の宗教の勧誘だったりする?
やべ、当たり障りのないこと言えばよかった。
例えば浮遊霊になってさ迷うとか、真っ暗になるとかなんとかかんとか。


「…面白い答が聞けてよかったよ。とても興味深い。」


「…それはなによりですね」


いいんだ、それで。
セーフか。
セーフなのか。
にしてもいきなり口調変わったなこの人。
やっぱ勧誘?
今度は俺が悶々と考えているとなくらさんはやっぱり微笑みながら口を開いた。


「君とは話が合いそうだ。俺と似ているのかもしれない。」


「…失礼なこと言わないでください」


「なにげに君の方が失礼だと思うよ」


にこにこ、とにやにやの中間みたいな表情になったなくらさん。
怒っている様子は、ない。
俺はチキンと同様に素直なとこにも定評があるから思ったことがよく口に出ちゃったりする。
この前の3人組襲来時が良い例だ。
でも今回は後悔してない。
本心だし。
…まあ反省はしてるけど。
と、1人心中で百面相をしているとふいに目前に手が伸びてきた。




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