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火のないところに煙がたった


「七瀬さああああん!」


「げ。」





前はほぼ毎日のように来ていた。
たとえ会わなかったとしても何らかの痕跡(バイクの座席に薔薇が置いてあったのが良い例だ)を残していっていたために彼の存在を忘れ去ることは無かった。
だから来なくなったと気付いた時にはもう諦めたのだろうと思っていたのだ。

その矢先に。

今目の前にいて顔面蒼白になりながら俺の肩をガクガクと揺さぶるのはどう間違ったか俺に惚れたというきだくんだ。
久々に会ったっつーのになんだこの仕打ち。
お前なんか頭もげちまえってか?
仮にも好きだと言った相手に対していささか信じがたい行為じゃないかこれ。


「嘘っすよね!?嘘っすよね!?」


「いや、なにががががが」


「ちょっと紀田くん!?七瀬さん離してあげなよ!!」


「俺はっ…俺は信じませんよ七瀬さんっ…!」


「がががががが」


「七瀬さああああん!!」


あ、これもうダメかも。
舌噛んだ。


「しっかりしてください!!」


「…りゅうがみねくん…?」


気付いたら俺を脅かす激しい揺れはおさまっていた。
とりあえず頭と胴体がちゃんと繋がっているか確認するために首に触れてみたら普通にちゃんとしている。

よかった。
切れ目とかはいってたらどうしようかと思ったっつーの。
100歩譲って愛故にだったとしてもそんな痛い愛はお断りだ。
俺Mじゃないし。

とりあえず安寧を勝ち取り安心した俺はメシアなりゅうがみねくんにお礼をした。
するとりゅうがみねくんはお礼なんて、と言いながら慌てて顔の前で両手を振る。
良い子だ。
改めて感心しているとりゅうがみねくんはきだくんに、俺に対して謝るように促した。
だからおとなしく謝罪してくれるのかと思いきやそうもいかず、きだくんはそんなことより、と切り出した。

そんなこと…だと…?

俺の首はきだくんにとってそんなことレベルらしいことに愕然としながらきだくんの話を聞く。
しかし俺は話の内容を聞いてますます愕然とした。


「七瀬さん、平和島静雄とあんなことやこんなこと果てはそんなことまでするような仲ってーのはホントっすか!?」


「はあああああ!?」


なんだそれ!?
あんなことやこんなことやそんなことってどんなことだよ!!
もしそれが××なことだとしたらお前これ許されたもんじゃねーぞ!


「嘘ですよね!?嘘なんですよね!?」


「ったりめーでしょうがお客様!」


力いっぱい否定したら視界の隅でりゅうがみねくんがホッと息をついた。
え、この話信じてたのりゅうがみねくん。


「ですよねー!いやー焦りましたよー。狩沢さんったら嬉々として『静ちゃん×七瀬くんサイコー!!』とか叫びまくってるし」


「他の方たちもそんなに否定しなかったもんね」


しろよ!
是非否定しろよ!
無許可で勝手に俺と誰かを掛け算するなんざ言語道断だ。
しかも俺右側かよ。
いや、左側だったらいいっつーもんじゃないけども。
やっぱ男としてはうんたらかんたら…


「まあでも安心しましたよ。いや、別に七瀬さんからの愛を疑ったわけじゃないんすけどね!あ、そういえばその前髪可愛いですね!イメチェンっすか?」


「え、ああこれですか?これはこの前平和島さんにもらっ」


「ええええええええ!?」




聞けよ。




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あきゅろす。
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