[携帯モード] [URL送信]
少年Kの場合


最近バイトを始めた。

過保護な兄貴と心配性な弟のせいで今まで必要以上に丁重な扱いをうけていた俺は世の中の酸いも甘いも全くもって知らないひよっこだ。
そんな自分の状況が嫌で頼みに頼んでやっとやらせて貰えるようになったこのバイト。
地元じゃ過保護な兄弟が毎日のように職場に来そうなので少し離れた、

そう。ここ池袋で俺は働き始めた。










「いらっしゃいませー」


バイトを始めて早いものでもう1ヶ月になる。
最近では明らかに未成年の客がレジにアルコール類を持ってきたときの対処にも慣れてきた。(身分を証明するものをお持ちですか、と問えばいいのだ。)
基本的にチキンな俺に接客業は向いていないと思っていたが人間やればできるもんだ。



コンビニという場所は様々な人間が集まる。
塾帰りのちびっこから暇をもて余した老人まで皆が何らかを求めて此処に来る。
それを観察するのが最近の俺のちょっとしたブームだったりする。


今も、ほら。
学校帰りらしい学生二人が雑誌コーナーで何やら物色中だ。
1人は派手な茶髪で制服の上着の下に明るい色のパーカーを着ている。
俺の学生時代はそういうのは許されてなかったからちょっと羨ましい。
そしてもう1人は真面目そうな黒髪に装飾のない制服姿。
なんとなくちぐはぐな感じのする二人だがどうやら仲良しさんなようだ。
あーでもないこーでもないと雑誌を選ぶ姿はまるで昔からずっと一緒にいるかのように親しげに見える。
しかも手に取る雑誌のチョイスがすごい。
あの雑誌を選ぶとは結構コアなお客さんだ。
だが俺に言わせればまだ甘い。
その下にある奴が一番内容濃いんだぜ。

そうそう、それそれ
あの編集者のコラムが堪らなくよくって、

って


―――――バッチン

「「!!」」


…うっわ!目ェあった!!
しかも茶髪の方と!
やばいやばいやばばいばい!!
見てたのバレたかな…?

ってこっち来たし!!




「い…いらっしゃいませ〜…」

「……。」


無言!
まさかの無言!!
どうしようめっちゃ睨まれてる…
怒ってんのかな…


「…て下さい」

「はい?」

何か喋ったぞ?
よく聞こえなかったので聞き返す。


「『何になさいますか?』って聞いて下さい…!」


え、


何?


「…は?」


「『何になさいますか?』って聞いて下さい!!俺に!!」


…怖いわ!!
何かものっそい勢いで変なこと言って怖いわ!!
しかも目血走ってない!?
怖い怖い怖い怖い!!!
でもこれ言わないと帰ってくれないよな!?
と、俺が意を決して口を開こうとすると茶髪学生は期待の籠った目でじっと俺を見詰めてきた。


「な、」


「『な』?」


「何に、なさいますか…?」







あなたをひとつ!


       」




「はあ!?」
「一目惚れっす!!ビビッときました!!」
「いや、知らないし!!」



(まさかの告白)
(いやいや、望んでないから!)







お題提供:Aコース様

[次へ#]

1/28ページ


あきゅろす。
無料HPエムペ!