終焉から始まる物語
「知ってます?今日はクリスマスなんですよ」
「……知らない」
知る筈が無い。
こうしてこの灰色の空間に閉じ込められてる私は。
時間も、季節も解る筈が無い。
解りきっているのににこやかに告げる相手に苛立ちながら顔を背ければクツクツと喉を鳴らす音が聞こえた。
「そんなに拗ねないで下さいよ」
「……拗ねてない」
顔を背けたまま眉間に皺を寄せれば冷たい指先が顎を捕らえた。
「本当、可愛らしい方ですねぇ」
珍しく、甘い口付け。
啄む様に落ちる唇にゆっくりと目を閉じれば舌先で唇をなぞり、離れた。
「……、一色?」
なにもされない、甘い口付けだけに戸惑い首を傾げれば一色はいつもの様に口許を吊り上げて嗤うだけだった。
「クリスマスですし、ケーキでも食べませんか?」
「……は?」
きょとんとした表情を浮かべる私が見つめられた一色の瞳に映る。
私の瞳に映ったのは、差し出された真っ白なケーキだった。
「ケーキ……?」
「えぇ、ケーキです。食べましょ?」
「………うん」
怪訝そうにケーキを見つめるもなにも仕込まれている気配も無い。
小さく頷けば、満足気に一色は微笑み私にケーキを差し出した。
欠片の優しさ
(ケーキプレイ、したくありません?)
(……これが狙いか)
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