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交代意識


クリスマス、なのに雨。
姉の手紙には、ホワイトクリスマスだって書いてあったからきっと雪が雨に変わったのだろう。
姉は白い雪、私は灰色の雨。
お似合いね、そう言って嘲笑を浮かべる私が窓に映った。


外に出れば、もうイルミネーションも消えてしまい真っ暗な道。
光を放つ自動販売機でなにか買おうと近付けば背後から声が聞こえた。


「…あれ?うさぎちゃん?」


「ひっ…!……え?」


後ろを振り向けば、傘の隙間から見える見知った顔。


「…ニィ、先生…」


「うん、こんばんはだね。うさぎちゃん」


「……はい、こんばんは」


「うさぎちゃん、お散歩?」


「…はい、クリスマスですから」


「あー、にしてはクリスマスっぽくないクリスマスだねぇ…」


「……そう、ですね。」


灰色の空、冷たい雨、闇に沈んだ街。
なにがクリスマスだ。
クリスマスなんてものは無い、これはただの私の日常。


「クリスマスっぽくしてあげる。ちょっとついておいで?」


「……え?あの…」


「いいからいいから」


手首を捕まれ、無理矢理に歩き出されれば抵抗する事を諦め渋々と歩き出した。
暫くすれば灰色の空さえ明らむ様な光が視界に入る。


「イルミネーション、きっと止めるの忘れてるんだろーね。」


豪華、とは言いがたいけど闇に包まれた私には眩しすぎる灯りに目を細める。
隣りにいる先生を見つめると視線に気付いたのか先生は微笑んで、私に掌を差し出した。


掌に乗っかるのは、小さなうさぎのマスコット。


「それ、可愛いでしょ?うさぎちゃんにあげる。クリスマスだしね」


「……あ、ありがとうございます…」


「いーえ」


受けとれば優しく、強く握り締める。
嬉しくて、自然と笑みが零れた。
これは私の、クリスマス。
姉のものではない、私だけのクリスマス。


雨の日の邂逅
(煌めいて居なくても構わない、)
(この優しい闇があるのなら)







あきゅろす。
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