遅れたバレンタインデー
バレンタインを逃してしまってから、もう5日。
彼が甘いのを好きなのは知らないし(ていうか死人って食事するの?)受け取ってくれるかわからなくて悶々としてたら渡すのをはばかられて、どうにも私は彼にチョコを渡す事が出来なかった。
可愛くラッピングできた、と喜んだのにあまり意味のなさなかったチョコレートを手で弄びながら椅子に腰掛けていまだ悩んでいると全く気配がしなかったのに彼…清一色が私を後ろから抱き締めた。
「っ、ひゃ?!」
「クク、相変わらずいい反応ですねぇ」
面白そうに嗤う彼の吐息が首筋にかかりビクリと反応しつつも彼からチョコレートを隠す様に手で覆っていれば意図も簡単に彼の細く長い指は私の手からチョコレートを取り上げた。
「あ…!」
「チョコ…ですか」
彼の目が細められれば、勝手にラッピングを解きチョコを取り出した。
あ、と口を開くのを待たず彼は私が作ったチョコを口に入れた。
ゆっくりと咀嚼すればまるで金魚の様に口をパクパクさせる私に清一色は口端をぺろりと舐めると細い目をさらに細めて嗤った。
「おや…?我にくれるんじゃなかったんですか?」
声色は悲しそうに、でも否定をさせない視線の彼に元はあげるつもりだったのだからと素直に頷いた。
「それにしても遅いバレンタインでしたねぇ」
「わ、私…貴方みたいな人にチョコ渡した事ないし…」
「……それどういう意味です?」
あきらかにムッとした彼に墓穴を掘ったと焦ればその光景に彼はすぐにクスクスと笑みを零した。
「まぁ、いいですよ。遅れた分を今から下さるなら、ね…」
「え?」
きょとんとする私を軽々と清一色は抱き上げる。
突然の事に私が固まっていると耳元での彼の囁きに頬を真っ赤にしてなすがままになった。
``チョコより甘い貴方を下さい''
翌日、立ち上がる事さえ困難になったのは言うまでも無い。
(ご馳走さまでしタ♪)
(来年は絶対普通に渡そう…!)
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