何やたって結局は悪戯(0005)
「お菓子ちょーだい」
「……子供か」
無邪気に差し出された手。
全く無邪気じゃない笑顔。
その笑顔に私は眉を寄せ暇じゃないのでとヒラヒラと手を振り博士をあしらった。
「お菓子をくれなきゃ悪戯するぞー」
「…あぁ。」
そう言う事か。
時計をちらりと見れば確かにまだ日付けは変わっていない。
俗に言うハロウィンか。
くだらない行事に興じてないで早く仕事をしろと怒鳴りつけたかったが未だに差し出された手を見れば怒鳴る気も失せて頭に手を宛てた。
「…博士が先に、お菓子下さいよ」
「え?いいけど」
あしらうつもりで次いだ言葉にあっさりと返答が。
唖然としている私に博士はうさぎの包みに包まれたチョコレートを掌に置いた。(用意周到すぎる…!)
「ほら早くお菓子ちょーだい?」
「……っ」
そんないきなり言われたってある訳ない。慌てて白衣のポケットを探ったって出てくるのは――
「あ、あった」
眠気覚まし様に買って残った、ノンシュガーのガム。
取り出して博士に渡すと博士はものすごいつまらない不服そうな顔で私を見据えた。
「それ嫌いだから嫌。」
「…私にどうしろと」
受け取って貰えずに差し出されたままのガムをポケットに戻して溜め息を一つ。
そもそもこんな奴に構ってたからいけないんだ。最初から無視すればよかった。
また仕事に戻ろうと書類に手を伸ばした瞬間手を掴まれた。
「……離して下さい」
「お菓子ちょーだい」
「だからありませんって」
「じゃ、悪戯ね」
「これが狙いか!」
どうやらこの男のはハロウィンなんて、抱く口実にしかならないらしい。
(お菓子が無いなら君を頂戴、)
(いやああああ!)
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