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叫び、悼み、破壊する(0001)


寂しい、その感情はいつも私を支配していた。いまこうして夕飯を食べ満腹になる腹の様に心も満たされたいと願った。夕飯である惣菜を食べ終え、皿を洗いながらまた漠然と私は寂しさに支配される。苦しくて、足掻く。足掻いても足掻いても、なにも手に入らない。残るのはそう、この寂しさだけ。私は常に寂しさと共にあった。誰も私の叫びに気付く者は、居なかった。

「……私は、ただの人間だから」

自分に言い聞かせる度に心が重くなるのを感じる。私は人として生まれ、真っ当した人生を歩んでいる。ただそれだけの人物である。私は特別な、人間ではないのだ。そんな事知っている。けれど何故かいつも心が重くなるのを感じた。

「消えたい、な」

漠然と思う。それはいつからか私の願いになり希望になった。消えたい、ただそれだけが私という存在に値するとまで思った。消えたいと願う瞬間だけ、その瞬きを終える程の一瞬だけ、私は寂しさから解放された。

「消してあげようか」

不意に男が現れた。その男は黒で、黒だった。嗚呼、死神だ。そう思った。私はこの死神に消されるのだ。やっと、この世から解放される。そう思うと喜びから身体が震えた。そうして静かに目を閉じる。目を閉じれば暖かな風が頬を撫でた。

「消してあげる、君を。君の人生を――ね。」


その日、私は消えた。私の身体を残して私の精神は消えた。死んだのでは無く、殺されたのでもなく消えた。私が最後に見たのは男の、何故か涙を誘う哀が交じった冷たい微笑だった。





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