界世の想妄、詮所
「つまらないわ」
吐き出す様に俺の前にいる女は呟く。
先程まで視線を宙に彷徨わせていたと言うのに突然次がれた言葉がこれだ。呆れた様に新聞から顔をあげればふてくされた視線がぶつかった。
「全くつまらないわ」
「2度も言わんで言い」
「聞こえてないと思ったんだもの」
がた、とわざとらしく音を立て勢いよく立上ったアイツを見上げればやはりふてくされた表情のまま。
「つまらなかったのよ」
「……なにが」
「暇だったから、妄想してみたの。私が三蔵にキスするのよ。」
ぶっ、と飲んでいた茶を噴出しかけた。何を言っているんだこいつは。電波に磨きが掛かっている。性格は病院で直せたか?
「つまらなかったわ、本当。」
「…所詮妄想だろ。」
「妄想だからつまらないのかしら」
それは俺とのキスがつまらないと言われた様なモノで。その言葉があまりにもムカついたから立上っているアイツの腕をひいて無理矢理キスしてやった。
顔を離せばそこにふてくされた表情はなくて、変わりに口許に弧を描き笑みを浮かべた嬉しそうなアイツがいた。
「ふふ…やっぱり本物の方がいいわ。」
それが挑発だったなんて気付かなかった俺は少し悔しくて、もう1度噛み付く様にキスを落とした。
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