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さそい【誘い】


「Hey, 名無し. What are you doing?」

「データを送信しています」

「data?またか」


私は三日に一度は研究所にデータを送るように設定されている。

このデータが向こうに無事に届いているかは分からない。



研究所からの返信はない。

やはり届いていないようだ。



「で?いい加減誰に雇われてるか吐く気になったか?」


片倉小十郎は私を警戒する。

私が【忍】ではないかと疑っているのだ。


「私は【忍】ではありません。人型独立調査機です」

「御託はいい」

「Stop,小十郎。いいじゃねぇか。どこだろうと構いやしねぇ」


伊達政宗が割り込む。

毎日このようなやりとりをしている。

私は片倉小十郎から離れたかった。

【不快】に彼も、私もなる。



「今日は町に行ってもいいですか?」


町人の生活様式も記録すべきだ。


「駄目だ。テメェみたいな怪しいやつが勝手に歩きまわるな」


片倉小十郎は、いつも私のデータ収集を邪魔する。

城内ですら彼に邪魔されて、未だ記録が十分ではない。

あぁ、【不快】だ。


また、胸部に違和感が生じた。



「では伊達政宗、私に貴方のことを教えてください」

「Oh,積極的だな」

「おいっ!政宗様を呼び捨にすんじゃねぇ!何度も言わるな」

「呼称の修正を行いますか?」

「あぁ。政宗様とお呼びしろ」

「修正に失敗しました」


片倉小十郎は私の呼び方が気に入らないらしい。

重要人物として、時代を超える前に名前が登録されている場合、
修正を行うには定められた手順を踏まなければならない。



片倉小十郎は私を【睨む】。


鋭い目付きで威嚇する。


なぜ彼が【睨む】のか、わからない。


「修正しないのですか?」

「してるだろうが。政宗様とお呼びしろ」

「修正に失敗しました」


彼は眉をひそめて、ため息。


「俺は気にしねぇよ。名無し、好きに呼べ」


伊達政宗が笑う。


「ありがとうございます」

「政宗様…」


また彼はため息。


私は伊達政宗の城においてもらっている。




「名無し, Come on. 俺とtalkしようじゃねぇか」


歩き出す。
片倉小十郎はついて来ないようだ。


「伊達政宗、なぜ貴方は英語を話せるのですか?」

「Ah, 気になるか? Kittiy」

「猫、は気になりません」

「No」


彼はくつくつと喉の奥で笑った。

この人の英語は理解し難い。


「俺としては、何故あんたが異国語を理解できるのかをききたいねぇ」

「私は完成した時点で、六ヶ国語の基礎的単語、及び文法を入力されていました」

「…Ah-」


彼との会話はいつも私で終わる。

だが、今日は違った。



「あんた、やっぱり忍じゃないな。世間知らず、って顔に書いてあるぜ。受け答えが下手すぎる」



【世間知らず】



「恐らく、それは正しいのでしょう」

「Why?」

「私は研究室から出ることを禁止されていたからです。【世間】を私は知りません」


彼は顔を歪めた。


「…お前はその、研究室って場所にずっと閉じ込められてたということか?」

「語弊があります。私は外に出ようと考えたことはありませんでした」

「いつからそこに居た?」

「私が生まれたのはそこです」


彼は何かを思案するように腕を組んだ。


「…今は、どうだ?」

「質問の意図が掴めません」

「外、に出たいか?」



外。

私はうなずいた。



「OK, let's go together」




彼は私に手を差し伸ばした。





【誘い】
一緒に行くように勧めること。ある気分や行為を起こすようにさせること。


落ち着かないのは何故だろう。
跳ねるような、気分になった。






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あきゅろす。
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