ふかい【不快】
ついていくと言った私に、
伊達政宗は「おもしれぇ」と答えた。
私はそれを了承と受け取った。
「名無し、お前はどこの忍だ?」
「【忍】ではありません」
「俺を偵察しに来たんじゃないのか?」
「広義で言えば【偵察】であっています」
「!!政宗様、お下がりください!」
茶色い人物が割り込んでくる。
「名無し。貴方は?」
覚えたての名乗り方で名乗る。
「…」
彼は答えない。
また名乗り方を間違えたのだろうか。
「こいつは片倉小十郎だ」
伊達政宗が答える。
私の名乗り方は伊達政宗にしか通じのかもしれない。
「政宗様、このような怪しい者に…」
「いいじゃねぇか。名無し、ついてこい」
「政宗様!」
【片倉小十郎】準確認重要人物だ。
「貴方のことも調べます。片倉小十郎」
二人の動きが止まる。
「HA!いい度胸だ。おもしれぇ。おい、お前、今の主に愛想尽かしたら俺の忍になれ」
「【忍】ではありません」
【忍】ひそかに敵の中に入り込み、情報収集を行う者。
私には当てはまらない。
「伊達政宗、私はあなたの城に行きたいのです」
「いいぜ」
「しかし政宗様…」
伊達政宗は馬上から私を真っ直ぐ見据えた。
「得体の知れねぇ奴に城下をうろつかれるよりはましだろ。You see?」
それに、と彼は笑みを浮かべて
「こんな堂々とした忍なんかいねぇよ。で、俺はこんな奴にやられはしねぇ」
と、言った。
片倉小十郎は黙った。
彼の顔は、険しかった。
感情を抑えているような目だった。
それがどんな感情なのかはわからない。
だが、【不快】に思われているのはわかった。
ただただ私は私がすべきことをしているだけなのに。
またどこかの機能に違和感を感じた。
ふかい【不快】
いやな気分になること。
相手が【不快】だと自分も【不快】。
なぜかはわからないけれども。
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