き【黄】 「大丈夫か!?」 茶色を纏った人物が馬から下りてきた。 「問題ありません」 「そうか。…ここで何をしている?」 「【親切】をしようとして失敗したようです」 「…?」 彼は黙ってしまった。 遠くから音が聞こえてきた。 【蹄の音】だ。 「HEY小十郎!どうした」 「はっ、猿飛佐助が領内に潜伏していた模様です」 来たのは、黒い馬に乗った青い衣装の男だった。 こちらに視線を向ける。 「そいつは?」 「猿飛に襲われていた様子で、今話を…」 「待ってください」 私は脳内のデータを呼び出す。 「もう一度言って貰えますか」 「…?」 怪訝そうな顔。 「私は、今、誰に襲われたのですか?」 「あれは…猿飛佐助という…忍…だが」 言葉を選ぶように彼は言った。 「【猿飛佐助】という人物は実在したのですか?」 私のデータでは【猿飛佐助】は物語から生まれた架空の人物であるはずだ。 「なにを…。今何かアイツと話してただろ…幻術には見えなかったが」 「了解しました」 データに書き加える。 「【猿飛佐助】、真田幸村に使える忍。間違いありませんか?」 「!?なんで真田の忍だと知っている!!」 茶色い彼の右手が刀に伸びる。 訂正はないようだ。 【猿飛佐助】データ入力完了。 「HA!落ち着け小十郎。お前、何者だ」 先ほどは名乗り方を間違えてしまった。 いつ名乗ったか、ときかれてしまっていた。 「名無しです」 簡潔に答えて、反応を待つ。 「名無しか。ほぉ、なかなかbeautifullじゃねぇか」 うまくいったようだ。 私は名乗り方を学んだ。 「俺は伊達政宗だ」 「それは本当ですか」 「?Of course」 私は知っている。 これを【幸運】という。 「では、私は貴方について行きます」 確認重要人物[伊達政宗]。 彼の顔を見上げる。 黄色い三日月がそこにはあった。 彼の顔を画像保存した。 ただの装飾であるはずの 黄色い三日月が 【綺麗】だった。 私は、【綺麗】を初めて知った。 き【黄】 色の三原色の一つ。 黄色。 きれいな色。 *前次# [戻る] |