ちゃ【茶】
サーモグラフィを起動する。
教えて貰った通り、南東に熱を確認。
【城下町】だ。
ふっと、視界の端にも熱源を捉えた。
視線を巡らす。
いた。木の上だ。【猿】にしては大きい。人だ。
私は近づいていった。
木の下まで来た。
見上げる。
なんてことはない。
彼女の真似だ。
人の真似が【普通】への近道だ。
「只今の気温は摂氏−6度。華氏20度です。この気温の中、人が活動できる時間は…」
【親切】を実行しようとしたが、
途中までしかできなかった。
「どこの者かな?」
木の上にいた人物は私の後ろに移動していたからだ。
首の一部の表面温度が下がり、圧力を感知した。
何かが当たっているようだ。
「答ないつもりかなー?」
「失礼しました。歴史事実確認センター、時空移動装置開発部門、人型独立調査機開発チーム作成、製造No.17。固有名称を名無しといいます」
「……。…摂氏とかってのに仕える忍?」
「その文法は間違っています。【摂氏】セシウスが考案した温度の単位。単位に【仕える】は出来ません」
「…へぇ。で、あんた、誰?俺様になんの用?」
「【様】人名などにつけてその人への尊敬を表す。貴方は尊敬される人ですか?」
「アハー。俺様腹立ってきちゃった」
「貴方、名前は?」
「ほんと、むかついてくるよね」
「人が名乗ったら名乗るものだと認識しています」
「あんたがいつ名乗ったのさ」
キイイィィイイン
金属音が響く。
首の圧力が消える。
音源は何かと振り向くと、足下に刃渡りの短い刃物が落ちていた。
咄嗟に拾う。
「落としましたよ」
差し出そうとしたが、そこに人はいなかった。
代わりに、黒い羽が落ちていた。
それも拾った。
むこうから【馬】が走ってくるのを視認。
【馬】は茶色、それに跨がる人物も茶色い服装をしていた。
ちゃ【茶】
黒みを帯びた赤黄色。
茶の若葉からつくった飲料品。
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