しろ【白】
この時代に来て9時間が経過した。
体内の時計は午前6時を示している。
起床の時間だ。
呉服屋の彼女は善人のようだった。
私に着物と硬貨を渡し、ここ、奥州について話した。
私は呉服屋を出る。
彼女は雪が溶けきるまで居ていいと言ったが、ここにいる必要はない。
「名無し、これ持ってきな」
「これは何ですか」
「握り飯と、御守りだよ」
【にぎりめし】【おまもり】。
初めてきいた。
包みの中を覗く。
炭水化物と小さな袋が入っていた。
【にぎりめし】=【おにぎり】
【おまもり】=【小袋】
私は受け取り、そのまま歩きだした。
なんだか違和感があった。
むずむず、そんな効果音が一番近い違和感だった。
この寒さで回路がおかしくなったのだろう。
博士との交信もできない。
暖かいところへ行ったら
脳内をスキャンしなければ。
私に与えられた使命。
〈歴史事実の確認〉
確認した事実を組み込まれたチップに書き込み、
未来へ送る。
交信が繋がり次第、
情報が送れるようにしなければ。
ここは奥州。
確認重要人物[伊達政宗]がいるはずだ。
辺りは一面、白かった。
それに光が反射して、眩しかった。
最後に見た彼女も、白かった。
しろ【白】
雪、紙、塩のような色。
犯罪の事実がない、こと(人)。
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