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かぎ【鍵】


大きな扉。
私の予想が正しければ、この倉は武器庫だ。
私は扉を観察した。
【鍵】がかかっている。
周りを見渡すが、【鍵】は見つからなかった。
私は踵を返した。





「伊達政宗、【鍵】を貸して下さい」

「Ah?」


私は道場の中に入り、伊達政宗にそう言った。
伊達政宗は木刀を持ったまま振り返った。
彼のさらに奥には片倉小十郎もいた。


「政宗様は修練中だ。後にしろ」


しゅうれん:候補4件
1.【収斂】
2.【修錬】
3.【修練】
4.【習練】


文脈から判断して、1を候補から削除した。


「【鍵】の場所を教えるだけでけっこうです」

「Ok. どこの鍵だ」

「武器庫の【鍵】です」

「Wait, んなとこに何の用だ」

「火薬や武器を確認したいだけです」

「なんでだ…っと、shit そうだった。お前に目的をきくのは無駄な行為だったな」


伊達政宗は頭を掻き、そのまま黙り込んでしまった。


「【火薬】の取り扱いについての知識はあります」


実際に触ったことや見たことはなかったが、危険性については十分に理解しているつもりだった。


「…わかった。好きにしろ。あんま触んじゃねぇぞ」

「お待ち下さい政宗様」


ここまでずっと黙っていた片倉小十郎が割り込んできた。


「一人で行かせるのはさすがに…」


片倉小十郎は畑にいるときとは違い、険しい顔である。


「一人でも問題ありません」

「駄目だ」

「見るだけです。使いません」

「そういうことじゃねぇよ。武器庫ってのをちゃんと分かってんのか?」

「【武器庫】戦闘に使う道具や火薬を」

「意味じゃねぇ。武器庫には敵に知られたくねぇもんも入れてあるってことだ」

「しかし」



「Hey, stop!」


その声に私と片倉小十郎は口を閉じた。


「こうしよう。俺がついて行ってやる」

「政宗様、修練は」

「わかってる。名無し、修練が終わってから行くぞ。それまで待ってろ」


今、私の時計は午前9時を示している。


「いつ終わりますか」

「俺が満足したらだ。You see?」


明確なタイムスケジュールは無いようだ。
それでは効率が悪い。


「ついて来るのは、あの人ではいけないのですか」


私は天井を見上げた。いつも通り、熱源を確認した。


「Ah? 誰のことだ」

「ずっと私についてきている人のことです」


私がこの城に来たときから、一人または二人分の熱源を天井か床下、木の陰などに確認していた。
鉄棒を振り回している男を見かけたときなど、呼び掛けたこともあったが、返答があったことは一度もない。

私は天井から視線を離し、伊達政宗に向き直った。

彼は困惑した顔をしていた。そして、その後ろに控える片倉小十郎は険しい顔で天井を見つめている。


「今もいるのか」


意識しなければ聞こえないほどの小声。


「私が二歩下がった地点の真上にします」


【深刻】
そう私は判断して、なるべく正確な情報を提供した。

【センチメートル】が使えないのは不便だと感じた。
そういえば、まだこちらの長さの単位を確認していない。
今日中に確認を済ませよう。






私がそう考えていた間。

三秒にも満たないわずかな時間に、片倉小十郎は動いていた。




壁に立て掛けられた槍をつかむ。

私の横を駆け抜ける。

私を床に倒す。

天井に槍を突き立てる。

天井から人影が現れた。





私は床に倒れたまま、その人物を見た。
いや、速すぎて人には見えなかった。
しかし、私の回路はそれを【人間】と判断していた。

人影は驚異的な速度で天井から床に、そして外へと消えていった。






「猿め」


伊達政宗が低く呟いた。


「誰ですか」


【猿】ではない。
あれは【人間】だった。
いつも私の近くにいた。



「猿飛佐助だ。前に会ってただろ」


片倉小十郎が言った。


「お前への監視の忍は、もうつけてねぇ」




【猿飛佐助】
教授は彼の存在を信じるだろうか。








【鍵】

錠を開閉する金具
問題の解決に役立つもの
ヒント





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