あお【青】 嗚呼、ついに完成した。 これで、我らの研究はついに第二段階に移行する。 眩しいくらい白一色な部屋の中央に、我々が持つ叡知の全てを注ぎ込んだそれがおいてある。 時空移動装置 本当はもっと洒落た名前を付けたかった。 しかし、我らは研究者。 研究は社会で認められなければ価値が無い。 【時空移動装置】 一般大衆にも分かり、受け入れやすい名前じゃないか。 俗に言う、タイムスリップマシーンだ。 もちろん、青い猫も用意してある。 これは我ら研究チームのスポンサーの希望だったため、私は初めはあまり賛同していなかったが、ここまでくるとタイムスリップマシーンが引き出し型ではないのが残念に思えてくる。 まぁいい。問題なのはその形状ではなく機能だ。 白い部屋に、小柄な女の子が連れられて来た。 「ほぉ。あの子が、かい?」 「えぇ。ご希望の青い猫ですよ」 「すごいな。人間にしか見えんよ」 この閉鎖的な研究所で青い猫と呼ばれるのは、長い年月をかけて作られた少女。 触ればやわらかく、温かい。 生きた人間に限りなく近い仕上がりになった。 試作品段階では黒かった髪は、隣にいるスポンサーの希望で今は青に染まっている。 「よろしければ、名前をつけてやって下さい」 「いいのかね?」 「もちろんですとも」 そうだな、と男は考え込む。その間も実験の準備は進む。 「名無しにしよう」 その名はすぐに実験スタッフ達と、我らの青い猫に伝えられた。 さて、始めようか。 世紀の瞬間だ。 その実験は失敗したかに思われた。 実際、私も今まで費やしてきた日々を思い、絶望した。 しかし、我等が時空移動装置を開けたとき、 中に青い猫、名無しは居なかった。 「センサーは?!」 「反応しています!名無しは無事です!」 密室の実験室に歓声が満ちる。 実験は成功したようだ。 我等の青い猫、名無しは時空を超えた。 あお【青】 空のような色。 三原色の一つ。 「未熟な」の意を表す。 【名無し】 空のような色を身に宿す、未熟な乙女。 彼女はとても、人工的で機械的。 次# [戻る] |