台詞のメモ
4人は黙り込んでいた。
睨まれた幸村は縮こまっている。
明日の朝は期待してるぞ真田幸村。
「…幸村さん、なんで泥がついてるんですか」
庭まで漁ったのか?
「いや…これは…」
此処が何処の国なのか調べようと町に出たところ、箱の如きからくりを発見し、なんと!これは元親殿の仁王車を改造したものであろうか…。よく見れば、人が中にいるではござらんか。是非とも、某と手合せ願いたく…
もう限界!腹筋が!!
笑いをこらえる。
彼は真面目に話してるのだ。
「っくく…!追い掛けたんですね」
その姿を想像する。
見たかった。
「追い掛けられた人もびっくりしたでしょう…」
事故とかおこしてませんように。
…普通、車が走る道路は舗装されている。
運転手は、畦道や林の中に突っ込んだのだろう。
これって私のせい?
誰か違うと言ってくれ。
でも勝敗が気になるところだ。
ここでようやく気が付いた。
ここは、幸村の怪我を心配するところだ。
ヒロインとして。
(いや、その前に人として)
やるか。
「あの、大丈…」
「あー名無しちゃんだっけ?ちょっといいかな?」
「はぁ…!?」
手を挙げたのは猿飛さん。
邪魔しやがって。
私をヒロインと認めない気か。
実際、向いてないけど。
彼は、昨日は下の名前しか名乗ってなかった。佐助さんと呼ぶべきか。
「名無しちゃん、此処の国の名前はなんていうの?」
そうそう。
自分たちの置かれた状況を把握してもらうために自由にさせたんだった。
「日本、です。…昔は日ノ本ノ国と呼ばれてましたが」
佐助が、息を吐いた。
大きく。
「…俺たちに何が起きてやがる」
伊達さんが呟く。
堂々としてる人だから、困惑した表情は痛々しい。
「あなた達は、過去、から来たんじゃないですか?」
全員の視線が私に突き刺さる。
「私は、あなた達の名前を聞いたことがあります」
表紙が破れたメモ帳を胸に抱いた。
「ずっと昔の武将の名前と、あなた達の名前が同じです」
驚愕で見開かれる目。
私は嘘をついた。
もし、自分がゲームの中のキャラクターだって知らされて、
平気なわけないじゃないか。
殺して殺して、リセットされてまた始めから。
そして、それを見て楽しんでいる人間が、私なのだ。
本来、出会うべきではない関係。
この嘘は、必要な嘘。
許してほしくはない。
「私の考え…どう思います?」
「信じられねぇな…だが、そうなのかもしれねぇ」
片倉さんが険しい顔で応える。
全部、夢だったらいいのにね。
私にとっても、あなたたちにとっても。
そしたら、もっと楽しい始まりになったのに。
「行くあてがないなら、ここに住みますか?」
私が、もっとしっかりしなきゃ。
ようやく、
昨日メモ帳に書いた台詞を、
言えた。
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