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名前のメモ


やっぱり脳内シュミレーションみたいにすらすら進まない。

昨日の夕飯が入ったタッパーと割り箸、コップを用意した。


「…えーっと、あっ!名前、名前おききしてもいいですか?」


最低限、名前は初日にきかなければ。




あれだ。

うっかり名前を呼ぶ

なんで知ってる!?

怪しい!(武器用意)



このパターンを潰しておきたい。


「伊達政宗だ」


よしっ。


「…片倉小十郎だ」


………………………。
…………………………。
……………………………。

佐助ええぇぇぇっ!
空気読んでよ!
なんで名乗らないのさっ!?

茹でタコな真田さんは仕方ないとしても、君は名乗ろうよ!


いい。


先人は偉大な言葉を残した。


将を射んと欲せばまず馬を射よ


逆だけど。


「名前…いいですか?」


俯く真田さんを見つめる。
よっぽとショックが大きかったようだ。
彼はずっとだんまりだ。


はっ、と顔を上げる彼。


「そ、某は、真田幸村と申す!名無し殿、先は誠に失礼をっ!!」


がばぁっと頭を下げる。
あはは。乙女だなぁ。

名前も覚えてくれたようだ。
ちょっと嬉しい。


「いえ、あなたにはむしろ助けてもらいましたし」


むしろこっちが謝りたい。
あなたの純情を弄ぶ計画を立ててすみません。


「…っっ!佐助!あやまらぬか!女子のゆ、湯浴み中に、なん、なんたることをっ!!」


やばい。頬が緩みそう。

伊達さんが納得したような顔で片倉さんを振り返った。


「でもさぁ、旦那。あの子、怪しくない?」

「佐助さん…とおっしゃるんですね?」


猿飛さんがこちらを向く。
今のはセーフだろう。
真田さんが呼んでたし。




「お疲れでしょう。みなさんおやすみなさい」


好きなだけ疑えー
と、心の中で悪態を吐く。
ふん。
家を漁ったって何も出てこないぞ。
ゲームも攻略本も友達のところだ。



「布団は押し入れにあるので。あと、それ、毒は入ってませんよ」


タッパーを指差す。






部屋を出る前、
真田さんをチラ見する。

彼はまた俯いていた。



尻尾と耳の幻覚は見えなかった。


くそう。
私が通ってるサイトの逆トリ連載では、初日になつかれて、
耳と尻尾の幻覚が見れたはずなのに。




本気で悔しかった。
やっぱり、
自分は物語のヒロインに相応しくないのだと、
実感した。






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あきゅろす。
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