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純真の芝居


朝ご飯を食べた。

悲しいことに、初めての未来食として食卓にのぼったのは、
肉じゃがと白米だった。

皆がおいしいと驚けば驚くほど、私のテンションは下がった。

あぁ、こんなはずではなかったのに。

しかし、肉じゃがは残り物。
量は少ない。
男の人には物足りなかっただろう。

パン等を買って、
早めに戻ってこよう。




その後、一番大事なトイレの使い方の説明をして、
それからようやく武器も手放してもらった。


「行くか」


やっと。

まさかトイレの説明でこんなに時間がかかるとは思っていなかった。


「あれで理解してくれたかな」


川が流れていて、それが一度せき止められている。
このレバーをひねればせき止めた水が流れる。

『水道管』では通じなかったので『川』と説明した。


下流の人はどうするのだとか、
飲み水はどこから汲むのか等の質問には、うまいことなってると適当に説明した。

武将たちの唖然とした顔は忘れないだろう。



「食器は水に浸けておいてください。帰ってきてから洗います」


いくら留守番組がオカンとオトンとはいえ、水道はまだ使えないだろう。

今は、トイレを理解することに全力を尽くして欲しい。


「あぁ、悪ぃな。…本当に武器も持たずに出掛けていいのか?」

「大丈夫ですよ、片倉さん!カツアゲもオヤジ狩りも心配いりません!私が彼らを守ります!」


ただし、群がるであろう乙女達は専門外ですが。


「ねぇ、俺様がこっそりついてくのも駄目?」

「駄目です!ご飯までに、ちゃんと部屋を片付けて貰わないと困ります」


警官にあっさりと見つかったあなたの"こっそり"はあてになりませんしね。

最後は心の中で呟く。

しぶとく言い募る二人をかわしつつ、玄関から外へ出た。



四人の前でチャイムを押してみせる。


ぴんぽぉん

と、特徴の無い音が家に響く。


「いいですか?誰かが訪ねてきた時に、この音が鳴ります。害はありません。もし鳴っても、今日は無視して下さい」

「はいよ」


ん。これはOKか。


「さて、行きましょうか」


地元高校の学生に扮した戦国武将を引き連れ、
鎧を着て、武器を持ったままの武将に見送られる。

これはなかなか体験できない。


素早くムービーを起動させる。

伊達さんの不思議そうな顔が画面に映った。


「Ah? What's this?」



……!これは。





お前!異国語が分かるのか!?



Yes



おもしれぇ!



Oh, my honey.
Oh, my darling



I love you





みたいな?


「最後のは謝罪します。ごめんなさい伊達さん。あなたを軽く見すぎですね」


携帯のカメラを向けながら言う。


「…おい、これはなんだ?」

「携帯です。映像…見たことや聞いたことをまったくそのまま記録できます」


撮り終わったムービーを保存して、再生する。


「政宗殿がいるでござる!」


はしゃぐ幸村。


「えぇ。隠し撮りっぽいですけど許してくださいね。これからもする予定なので、先に謝ります。ごめんなさい」

「あ、あぁ…?」


謝罪をうけとりましたね?

もうあなたからの写真などに関する苦情は受け付けませんから。

にこにこ笑う私。
心の中は、戦国武将には考えられないかんじになっている。






目指すは徒歩20分のデパート。



デジカメ、携帯、
充電満タン。


さぁ、撮る。
とにかく撮る。
許可もでた。





振り返ると、玄関にまだ二人が立っていた。



(小学校に入学した我が子の初めての登校を見守る親みたいだなぁ)





是非もなし!
しっかり写真に残した。


保護者として期待通りな二人に敬意を払い、
携帯に二人の為の新しいフォルダを作ることにした。



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