四月馬鹿ログ2
4月1日は名前変換機能によって「榛名」の部分が「坂上田村麻呂」と表示される謎使用でした



面倒臭い。
俺が今そう感じているのは、なにも射精直後という事情ばかりではないはずだ、と阿部は考える。

感情が面倒臭い。
胸のなかで悲しみも怒りも区別がつかないほどまぜこぜになって、何を思えばいいのかわからない。
吐き出したくとも声をあげる元気も残っていない。

先程から視界の端をチラチラと移動する姿が見える強姦魔を恨みがましく睨み付けてやるべきなのかもしれないが、それが一番面倒臭い。
俺は榛名が面倒臭い。
あの人は何を考えているのかわからないし、わかりたくもない。わかる必要だってないはずだ。
なのに榛名は俺に理解を求める。
「なんでこんなことになったんだろうなぁ?」
阿部のけつの穴でグチュグチュと音を奏でながら、榛名は非難がましく言った。
知らねぇよ。
強いていうなら、テメェが俺に変な薬を飲まして押し倒したからだよ。

「……タカヤ」

仰向けに寝転がる阿部に榛名は、嬉しそうなような恥ずかしそうなような申し訳なさそうなような、曖昧な顔をして話し掛けた。
その表情だけで阿部は肩が重くなるのを感じた。
面倒臭い。
榛名は何か言おうと口を開いたが、舌をペロリと出しただけで結局何も言わなかった。
不意に、携帯電話が鳴った。
「三橋!」
阿部はそれまでの気だるさなど放り投げて立ち上がると、携帯電話を耳に当てる。
三橋三橋三橋。
こんなところで木偶の坊と無駄な時間を過ごしている場合じゃない。
今日は三橋と約束をしているんだ。


榛名が目を開けたまま、大の字でベッドに寝転がる阿部の顔を覗き見たのは泣いているかもと思ったからだ。
泣いていて欲しいわけではなかった。
では、どんな顔をしてほしかったかといえば、わからない。
一つ言えるのは、あんな無表情だけは嫌だったということだ。
最初、榛名は阿部がショックで放心して無表情なのだと思っていた。
しかしその数秒後、阿部は携帯のバイブに呼び出されいとも簡単に立ち上がった。
「三橋?ああ、ちょっと昨日からめんどくせぇことがあって、もしかしたら遅れっかも」
と、電話に話しかけながら阿部は風呂場へと歩いていった。
足がよろめいていなければ、昨夜の出来事を忘れてしまいそうなほどだ。
心が怒りで燃え上がる。
なんで犯されたのにそんな普通にしてられんだ。俺に犯されるのは傷つくほどのことでもないってか?
榛名は阿部に自分の存在を誇示したかった。だから犯した。
そうしてどうするつもりだったのか、榛名はわからない。
阿部に嫌われたかったのか、好かれたかったのか。訴えられたかったのか、性奴隷にしたかったのか。
しかし、結果はどれでもない。
阿部のなかに榛名はいない。いないものは存在を誇示しようがない。
三橋、と口のなかで思う。三橋、三橋、三橋……。
いくら名前を繰り返そうとも、榛名は何も感じない。
興味がないからだ。
そう気づいたとき、榛名は神経が焦げ付いていくのを感じた。



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あきゅろす。
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