デュラパロ
長いこと居座っていた拍手
drrrパロのはずなんだけど、原型がログアウト
・元ネタは知らなくても(ある意味)平気だと思います
・↑知っていようと、知らなかろうと楽しめないという意味で
・なんかアベミハ臭がプンプンするぜ
・阿部くんがキモい。すごくキモい
・あと阿部君の目的が分からない
!drrr一巻の微ネタバレになっている部分があります!
登場人物
阿部隆也
自称永遠の21歳
情報屋という名の捕手
選手のことならなんでも知ってるよ
ちょっとお尻が軽いよ
なんか三橋にウザイくらい絡んでくるよ
昔、榛名と一悶着あった…、けど本人にとっては黒歴史
だから榛名嫌い。死ねばいいのに!
榛名元希
取立人と言う名の投手
端的いえば人より(大分)力持ちなバーテンコスの男
投手ビッチな阿部くんにヤンデレて以来、ラムちゃん的な意味で阿部くんにゴミ箱やら自販機やら投げつける日々
たぶん阿部くんを殺してピーするつもり
本当はいい人だよ!
一番原型がない(榛名という意味でも、静雄という意味でも)
三橋廉
16歳
高校進学のために埼玉に引っ越してきた
イイコだけど辛辣。覚醒させると怖いよ!
非日常に憧れるっていうか、危ないことに惹かれる年ごろ
では、ぐぐいと下へどうぞ
私は一足先に死んできます!\(^o^)/
ファッションビルに取り付けられた大型ビジョンに写し出されるナイターに耳を傾けながら、阿部隆也はひっそりと笑った。
明日、この街に新しい投手が来る。
阿部の調べによると、なんでもその投手はストライクゾーンを正確に九分割に投げ分けられるコントロールと、四つもの変化球をもった投手なのだという。
ストライクゾーンを九分割に分けられるなんて、プロにもいない!
頭のなかで情報を反芻するだけで左手が疼くような気がして、阿部は体を震わせた。
しかも、それだけではない。それだけでも十分魅力的だというのに、明日この街に来る投手はそれだけでなく…。
阿部は携帯電話に映った小動物を思い起こさせるその投手の顔をなぞり、小さく笑い声を漏らした。
投手、ラブ!
俺は投手が好きだ、愛している。
…だからこそ、投手の方も俺を愛すべきだ。
コイツの球を捕りたい。
俺ならコイツを100パーセント活かしてやれる。コイツなら俺のリードを100パーセント活かしてくれる。
楽しみだなァ楽しみだなァ楽しみだなァ…!!
目の前に広がる楽しい想像に、阿部は軽くのけ反った。
奇しくも、液晶ビションのなかでは贔屓のチームが勝利し、投手は完全試合を達成したところだった。
阿部隆也は投手が好きだ。
沈み込むようなフォークを投げるあの投手も、滑るようなシンカーを投げるあの投手も、どこかのノーコンオレサマ投手以外、阿部はみんな愛している。
にやにやと口の端を歪めていた阿部だったが、不意に背骨を抜かれるような悪寒を感じ、眉をひそめた。
阿部が振り向くより早く背後で怪音が鳴り響き、携帯の液晶画面に反射した見慣れた人影に、阿部は舌打ちをした。
不本意ながら見慣れてしまったその人影は、いつものようにキッチリとシャツとベストを着込み、タイをつけている。額に浮かぶ青筋までいつも通りだ。
「たあぁぁぁぁぁぁぁかぁぁぁやぁぁぁ……」
「…元希さん」
地を這うような低い声を発した榛名元希は、手近にあった自動販売機を持ち上げた。
榛名の大変優秀な視力は200メートル先の阿部の姿も、彼の手の中にある携帯電話に映る見知らぬ少年の姿もとらえていた。
「まぁた、浮気か?ホントに…、タカヤは……しょうがねぇな」
「浮気ってさ、俺とアンタはもうなんの関係も…」
「しょうがねぇから…、一発で勘弁してやる…」
昔、一悶着あったこの投手を阿部は唯一の例外として嫌っている。
彼がその昔、自分を物のように扱ったことも、今でも阿部は自分の物だというように振る舞うことにも辟易していた。
「ホント、冗談じゃねぇよ」
男の手から投げられた自動販売機によって、阿部が最後まで言葉を紡ぐことはなかった。
「ミハシレン…くん!」
校門を出たところで、低い声に呼び止められた三橋廉はくるりと首を動かした。
すると、ふわふわと重力を感じさせない足取りで、黒ずくめの青年がこちらに向かって歩いてきた。
「は、はい?」
「三橋、廉、でしょ?」
季節感のないファーコートを羽織った青年は弄っていた携帯電話に一瞬目をおとすと、三橋の顔をよくよく確認して、にっこりと感じよく笑った。
「は、い。えっと…?」
顔見知りの親しさで笑う青年に三橋は困ってしまった。
青年は三橋を知っているようだが、三橋は青年の顔に覚えがない。
「あぁ、俺がお前を一方的に知っているだけで、俺とお前は知り合いじゃないから。安心して」
にぃっとさっきまでの綺麗な笑顔をどこか歪な笑みに変化させた青年に、どこが安心できるのだろうと三橋は思った。
「俺は阿部隆也。さいたまの(無敵で素敵な)捕手だから。ヨロシク」
「う、ぁ…。三橋廉、です」
三橋独特の話し方に一瞬だけピクリと目元を引き攣らせた阿部は、気をとりなおすように一度目を瞑ると「よろしく」と、左手を差し出した。
同い年の従姉妹に三橋はよく、警戒心が足りないと注意される。
しかし一方で、幼馴染みには三橋は人を見る目があると誉められる。
それはどちらとも三橋廉という人間を正しく言い当てている。
三橋は少し怖いと思いながらも、断りきれずに阿部の左手をおずおずと握った。
マメが潰れてはまたふさがりまた潰れて…を繰り返してきた投手の硬い手の平に、阿部は満足した。
「ねぇ、投げてみない?」
「え、あ?ぅ?」
「中学で投手だったんでしょ」
その言葉に三橋は目の前が暗くなるのを感じた。
目の前のピエロのような笑顔の男も、真新しい糊の効きすぎた制服も、街を歩く人々の雑踏でさえ三橋を責めているような気がした。
「え、あ、…う」
「俺、野球やってる奴のことならいろいろ知ってんの。そーゆーの、趣味だから」
「……い、や…です。俺、ヘタ、だから」
ショルダーバックの肩かけ紐を握りながら、三橋は俯いた。
「下手?」
「ダメピ、だから…」
三橋の口からでた「ダメピ」という言葉に阿部は片眉を持ち上げた。
阿部は三橋廉が中学時代どのような生活を送っていたか知っている。
理事長の孫だからと、監督にエースとして祭り上げられ、バカスカ打たれまくった形ばかりのエース。エースを渡せ、野球部辞めろ、と言われても3年間エースにしがみついた強情な男。
「そんなことないよ。俺に投げてみなよ。オレがお前をホントのエースにしてやる」
俯いていた三橋がパッと顔を上げた。
「だから、さ、三橋。俺に投げてみ…」
阿部の言葉が最後まで紡がれることはなかった。
弾丸のように飛んできたゴミ箱が阿部の側頭部にクリーンヒットし、阿部の体が人形のように吹っ飛んでいってしまったからだ。
散らばったごみ、力なく投げ出された手足、まるで事故現場のような惨状についていけない三橋が身を竦めていると、ゴミ箱が飛んできた方向から背の高い男が現れた。
「たぁぁぁ〜〜〜かぁ〜〜〜やぁぁぁ」
おどろおどろしいオーラを発しながら登場したバーテン姿の男は、ひょいっと傍に立っていた「止まれ」と書かれた交通標識を掴んだ。
「二度と埼玉には現れんなって言わなかったか?タカヤクンよぉ…」
白く塗られたポールを掴む筋張った手に、より一層血管が浮かんだかと思うと、べきべきという音とともに標識が引っこ抜かれた。
抜いた雑草に土がつくように、コンクリートを根っこにつけた標識を担いだ男は不機嫌そうに掛けていたサングラスを外した。
「なのに全然傷ついた顔しねぇし!しかも、俺の前で他の男口説くとか!なに考えてんだぁ!!」
ビシィと標識の先を地面に突っ伏す阿部に向ける。
その目には、二人に挟まれ体を小さくする三橋の姿はまったく映っていない。
「久々に俺に会いに来たと思ったら、他の男ナンパしてやがるし…」
「昨日会いましたよね?っていうか、アンタに文句言われる筋合いなんてねぇよ」
三橋が榛名に目を向けているあいだに、死体のように地面に転がっていた阿部が、いつのまにか立ち上がって服の埃を払っていた。
「元希さんの話って理屈も言葉も、っていうかそもそも前提が間違ってるから苦手だよ」
「お前今浮気しようとしてたよなぁ、浮気するってことは悪いことだよなあ、悪いことしたらなにされても文句言えねぇってことだよなぁ…!」
「だから、俺とあんたはもう何の関係も…」
「浮気は一発。グッシャグッシャのグッチョグチョになるまで。俺は優しいから、それで許してやる」
ニィっと獰猛に笑った榛名の口元から鋭い歯が覗いた。
「やっべ…、わりぃな三橋」
阿部は、コートを翻すと猫のような素早さでその場から走り去っていく。
「"また"、な!」
逃げ去る途中、一度だけくるりと振り返った阿部は胡散臭いくらい爽やかな笑顔で三橋に手を振った。
走り去る阿部の背中に榛名はやり投げの要領で標識を投げつけたが、果たしてそれが阿部に命中したかどうかは三橋にはわからなかった。
阿部のいなくなった路上で、よくも知らない男と二人取り残されてしまった三橋は、自分の存在を少しでも薄くしようとただでさえ小さな体をより小さくした。
男が野獣のような目で阿部の消えていった方向を睨んでいるあいだに、こっそりとこの場から立ち去ればよかったのだが、あいにく三橋の足は固まってしまって動けないでいた。
「…おい」
「ヒッ!」
「テメータカヤに何言われた?」
「う、ぁぁぁ、」
「んな、ビビんな。とって食いやしねーよ」
お前の立っている場所で超局地的な地震でも起きているのかという怯え方をする少年に、榛名は心配になってとりあえず少年の震えを止めようと肩に手を置いた。
細い。
自分の怪力では軽く握っただけで壊れてしまうのではないかと想像させるほど、華奢な肩だ。
「俺も投手なんだ。昔あいつと組んでた」
腰をかがめて、三橋の様子を伺う榛名の声は優しい。
「…あ、えっと…、な、投げてみない、って。言、われました」
やっぱり、と榛名は思った。
また阿部の悪癖が出た。
榛名の恋人(榛名いわく)には、手当たりしだい投手を誘惑し遊び倒すという悪癖がある。(榛名いわく)
「…お前も投手なの?」
こんな細い肩なのに。
「は、ハイ。………一応」
「じゃあ、お前投げるの?タカヤに?」
そう訊いた榛名の目のなかに、鈍い光が宿っているのを三橋は見た。
その光に三橋は自分のなかの闘争心が掻き立てられるのがわかった。
投げたい。
「………はい」
一方榛名は、小さく呟かれた三橋の言葉が、思いのほか力強かったことに驚いていた。
ちりちりと自分の心のなかで嫉妬の炎が燻っていくのがわかる。
しかし、この少年の細い肩では、ロクな球なんか投げられはしないはず、という余裕も榛名のなかにはある。
こんな華奢な体から放たれる球、きっと一球受けたら阿部は満足して、捨ててしまうだろう。
…勝った。
「そっか。…お互い、がんばろーな!」
にかっと笑った榛名は、壊さないように注意してその細い肩を叩いた。
ホントのエースにしてやる。
阿部の言葉が三橋のなかで反響した。
三橋は恐る恐る自分の右手を見た。
三橋の眼に宿った光は、榛名の目に差すものと同じものだった。
俺がお前をホントのエースにしてやる。
榛名と別れたあとも、三橋の中でずっとその言葉が鳴り響いていた。
あんなことを言われたのは初めてだった。
投げたい、またあのマウンドに上りたいと三橋は思う。
「おい」
本日二度目、呼び止められた三橋が振り替えると、そこには三橋の中学時代のチームメイトがいた。
「え…、あ、なんで…」
なんでここに彼がいるのだろう、と三橋は不思議に思った。
「相変わらずムカつくしゃべり方してんのな」
しかしすぐに三橋の心は恐怖に固まっていった。
「まさかお前まだ投手やりたいたとか思ってんの?」
反射的に三橋は右手を背中に回し、彼から見えないように庇った。
今まで浮き足立っていた心が水を含んだように重くなり、急激に沈んでいくのを三橋は感じた。
どうして彼はここにいるのだろう。どうして彼は自分の心情がわかるのだろう。
「やっぱあん時、腕折っときゃよかったか?」
恐怖と罪悪感に三橋の心は凍りついていった。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい…
でも、俺は…。
「ハイ、そこまでー」
睨みあう二人のあいだに、やけに明るい声が響いた。
「大丈夫だった?」
固まってしまった三橋を近くのベンチまで運んだ阿部は、三橋の背を優しく撫で、飲み物を差し出した。
「あ、ぅ、平気、です…」
ショックを受けながらもごくごくと飲み物を喉に流し込んでいく三橋に、阿部は口元を歪めた。
「酷いね。腕折るとか」
「で、も、俺が、悪いから…」
「そんなことないって。…大丈夫、お前はいい投手だよ」
本当だ。心の底から思う。
「投手としてじゃなくても、オレはお前がスキだよ」
これは嘘。オレが愛しているのはあくまで投手であって、三橋ではない。
ここ、重要。
しかし、三橋にはこの言葉が効いたようで、俯く三橋の目にはギラギラとした光が宿っている。
あと一歩だ、と阿部はほくそ笑む。
三橋の中学時代のチームメイトを今日ここに招いたのは阿部だった。
正確には"たまたま"埼玉まで来ていた彼に、三橋がまた投手をやろうとしている
と伝えただけなのだが。
予想通りの行動をとった彼に阿部は感謝する。
お陰で三橋の心はスカスカだ。付け入る隙が幾らでもある。
今度は握手ではなく、引きずり込むように阿部は三橋の手を握った。
シュートのタコ、スライダーのタコ…、見かけとは違う三橋のゴツゴツとした掌に阿部はうっとりした。
「だってお前、がんばってんだもん」
その言葉で理性が切れたように、素早く動いた三橋がベンチに阿部を押し倒した。
「…阿部くんには、私が投げる」
鈍く光る三橋の目の色に阿部は自分が食われるのを感じた。
「大当たりだ」
全方位にスライディング土下座したい気分です
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