ふがし様 ちゅちゅぺろぺろ
注・通貨がふ菓子です
しかも、というべきか案の定というべきかその設定は必要はまったくありません(むしろ邪魔です)
榛名は毎年たくさんのふがしを稼ぐプロスポーツ選手だ。
そんな彼の暮らしは、数多の女と、目を瞑っていても懐に入るふがしに囲まれたなんの不自由のない生活だった。
しかし、そんな彼にもたった一つだけに手に入らないものがあった。
「105円になります」
いつものコンビニでいつものキシリトールガムを買う。
いつもの店員はいつものように105円分のふがしを正確に千切ってお釣りを渡した。
「イラネ。それよりお前いくら?」
「俺はふがしでは買えません」
これもいつものやり取りだった。
「じゃあ何で買えるんだ」
「俺は愛情で買えます」
榛名はすっかり困ってしまった。榛名は愛情をふがしで買っていたからだった。だから榛名は愛情の形をふがししかしらない。
しかたがないので榛名は阿部をふがしが必要な状況に追い込むことにした。
手始めに阿部の働いていたコンビニを買い取り、阿部をクビにした。
「今のお前いくら?」
「俺はふがしでは買えません」
いつものようにそう言って背を向ける阿部に榛名は困ってしまった。
これではもう二度と阿部と会えなくなってしまう。
しかたがないので榛名は阿部がそこから立ち去ることのできないよう脚を切りおとした。
「今のお前いくら?」
「俺はふがしでは買えません」
そう言って地面を這いつくばって進む阿部に榛名は困ってしまった。
しかたがないので榛名は阿部を監禁することにした。
「今のお前いくら?」
「俺はふがしでは買えません」
そう言って榛名の運ぶ食べ物を口に入れない阿部に榛名は困ってしまった。
日に日に憔悴していく阿部に榛名は心がかき乱されるのを感じた。
トラック一杯のふがしと交換して買い付けた食材も、それを世界一のシェフに調理させた見ているだけでほっぺたがおちそうになる食べ物だって阿部は口に入れない。
榛名は阿部にたくさんのふがしを使った。しかし、阿部が手に入ることはなかった。それだけでなく、今まで榛名の手にあったものが徐々になくなっていった。
ついには、榛名は一文なしになってしまった。榛名は困ってしまった。これではもう、阿部を手にいれるどころか気を引くこともできない。
榛名は阿部に運ぶ食べ物にも、自分自身の食べ物にさえも困ってしまった。
榛名は道で拾ったパンを大きい欠片と小さい欠片に分けると、大きな欠片を阿部に渡した。阿部はまだなにも食べなかった。
そのとき阿部は初めて、榛名に渡された食べ物を口にいれた。
ふがしの欠片ほどの価値もない、土の味のするパンだった。
榛名が安心したのもつかの間、阿部が眠るようにして倒れてしまった。
榛名は這いずりまわってふがしをかき集め、阿部を病院につれていくことにした。
すると、榛名は逮捕された。
刑務所にいる榛名に、ある日阿部が会いに来た。
「俺にはもうお前を買うふがしがない」
「俺はふがしでは買えません」
「じゃあ何で買えるんだ」
「俺は愛情で買えます」
困ってしまった榛名に阿部は小さく微笑んだ。
「ここを出たらもう一度、俺を迎えにきてください。そのときは、俺はもうアンタのものです」
もともとこの話は日記にあげたクソ文だったのですが、ふがし様がこの話を褒めてくださってうれしかったので、ふがしの方に捧げます
あと「ふがしの人」というHNは、大変素敵です
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