ねろ様 ちゅちゅぺろぺろ
よいよめ。



三日ほど前から掃除を少し凝ったものに変えたのだがそれももうすぐ終わるだろう。

風呂の隅から換気扇まで、一部の隙もなくピカピカだ。

なんとか今日までに納得できるところまで仕上げることが出来た。

クリームシチューも一ヶ月前から研究に研究を重ね、先日、巣山に「レシピ教えて」言わしめた代物が鍋のなかで今か今かとその出番を待っている。

余談だが花井は「美味すぎて引く…」と言った。絞めておいた。


あとは乾かしてある食器をしまったら、まさに完璧。
居酒屋のバイトよろしく、驚異の指力で食器を持って美しくに並べていく。

俺には美意識というものは搭載されていないが、家具屋で貰ってきたチラシを参考に住みたい家のインテリアというものを実践してみている。
はたして成功しているのかいないのかわからないが、巣山は「落ち着くかんじだな」と言ったので、良いはずだ。

余談だが水谷は「阿部っぽくなーい」と言った。殺しておいた。



ふと、食器棚のガラスに自分が写った。

髪の毛がボサボサのような気がした。

では、普段はサラサラなのかといえば、断じてそんなことはないし、よく考えるとどこら辺がボサボサだったのかわからないのだが、なんとなく気になって洗面所に向かった。


俺、目ェ死んでね?

昨日、夜遅くまで掃除していたからかもしれない。
それともシチューを当日作るか、前日に作って寝かせたほうがいいのか、悩んでいたのがいけなかったのか?
それともそれとも、インテリアへの自信のなさが顔にでているのか!?

取り敢えず顔を洗おうと蛇口をひねったところで、玄関からガチャガチャという音がした。

空き巣でないなら、家主が鍵をまわす音だ。

空気読めよ、このやろう!俺はこれから風呂に入りなおして仮眠をとるので、出直してこい!!


「ただいまタカヤー。…ってなにしてんだ、そんなとこで」

久しぶりに帰宅した榛名は新しく卸したフカフカのスリッパが用意してあったのに、古びた綿の抜けたスリッパを履いて台所まで入ってきた。

右肩に背負った荷物がいかにも重そうで急いで榛名に駆け寄った。
中身はだいたい洗濯物なのでそのまま洗面所に置いておくことにする。

「おかえりなさい」
「おう。たでーま」

言い含めるようにゆっくりと言った榛名は、じっと俺の顔を見る。

あんま見んな。目やにがついているのか。鼻毛がでているような気もしてきた。

「お前、あれは。玄関まで走ってきてサァ、ご飯?お風呂?それともア・タ・シ?っての」

真性のアホだコイツ。



さて、最初こそつまずいたが、その後は無事この日のために買った皿でシチューを振る舞い、榛名から「うめー」という言葉も引き出すことが出来た。

「お前は食わねーの?」
「俺はもう食いましたから」
「食えよ、うめえよ?」
「…しってます」

美味いはずだ、そのシチューは。田島も三橋も鍋が空になるまで食いつくしたから。アンタもこれで四杯目のおかわりだ。
だが、俺は腹のなかにものを入れるわけにはいかないのだ。
今夜のためにした準備が台無しになってしまう。



榛名が風呂に入っている間に洗い物と、さっき受け取った荷物の振り分けを行う。
榛名の鞄は混沌としており、パンツから億の金額を記した契約書まで、なんでも出てくる。
唯一の共通点はすべからくぐしゃぐしゃになっていることくらいである。



洗濯物は洗濯機に、書類やら写真やらは榛名の机へ。

カーボン製の机はいつまでたっても使われた形跡がなく、にも関わらず俺がこの家で唯一掃除を許されていない箇所だ。
どうせ、エグいエロ本あたりが隠してあるのだろう。ポツンと置かれた広辞苑がいかにも怪しい。



「タカヤ」

台所に帰ると半裸の榛名に抱きつかれた。
まだ体の六割が濡れており、この人は俺をタオルと勘違いしているではないかと疑うほどだ。

「風邪、ひきますよ」
「どーせすぐ、暑くなる」
「でも」
「タカヤ、ベッド行こうぜ」

言いつつも、着々と服のなかに侵入してくる手にあんまり焦らすとここでいたしかねんと判断する。



無事、ベッドに連れ込むことに成功したがそれまでの間にほぼ全裸に剥かれた。足跡のように転々と落ちた服がこれから行う行為をはっきり暗示している。

「なんかお前、やあらかくね?」

撫でるように尻を触っていた指が止まり、先端を捩じ込まれる。
痛みはない。

「なあ、きいてんのか!?」

榛名はなにか下世話な勘違いをしているらしい。顔がひきつり、大変不細工なことになっている。面白いのでもう少し見ていたいが、どんどん捩じ込まれる指にそんな余裕はなくなる。

「自分で…、しましたから」

自分で思っているより俺は追い詰められていたらしい。声は震え、吐息混じりの気色悪いものだった。

榛名はこれまた不っ細工にニンマリ笑うと、手を引き抜いてぎゅうっと俺を抱き締めた。

俺もなんかたまらなくなって、榛名に抱きついた。





かなり前にいつもお世話になっているねろさまに押しつけたものです。
今更ですが、煮るなり焼くなりしてください


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