これから始まる


「みょうじさんって、可愛いよね」

さらさらと風がふいた。この人は何を言ってるんだろうか、なんて私はまじまじと見つめれば、いつもはまんまるな瞳を細めて、尾浜くんはこちらを見て微笑んでた。

いつもみたいに可愛い感じの彼じゃなく、なんというか彼に色気みたいなものを感じた。

もう夏も終わりなのか、私の視界…尾浜くんの傍にある木からは葉っぱがひらりと落ちた。
また卒業までの道のりを私たちは一歩進んでしまった。そんな寂しい気持ちのなかで、ずっと片想いしていた尾浜くんが私を可愛い、と言った。

「すき」じゃなくて、「可愛い」。思い描いたものではなかったけれど、今…それで充分幸せだと思った。

「ありがとう、尾浜くん」

私は彼に微笑んだ。幸せな気持ちが溢れ出して、ニヤけないように。尾浜くんの中の可愛い私のままで居られるように。

尾浜くんは、そっとこちらに歩みだした。尾浜くんがこれ以上近付けば、私はこれはもう卒倒ものである。

…きっとドキドキして堪らないんだろう。

「私、用事あるからまたね。」

私は歩く尾浜くんに、ぽそりと言った。
自制心っていう言葉を使うのはきっとこんな時なんだろう、と私は思った。

私は後ろを向き、歩き始めた。きっとこれで良い。
今、私は幸せでいっぱいなのだから。


「みょうじさん…、待って」

後ろから尾浜くんの声が聞こえた。振り向くと、尾浜くんはもう目の前だ。

「…なんでしょう」

近すぎる私たちの距離にドキドキする。尾浜くんには手首を掴まれた。

「言いたいこと、可愛いってことだけじゃないんだ。」

彼の震える声、潤むまんまるい瞳。

「尾、浜くん…」

心臓が飛び出てしまいそうで、いたくてたまらない。
「好きなんだ、みょうじさんが」

心から、何か溶け出したようにあたたかく熱がこもる。私に好き、と言った尾浜くんは、真っ赤に顔を染めていた。

「私も尾浜くんが好き」

まんまるい瞳が広がる。潤む瞳の中には私が見える。
尾浜くんの顔がだんだん近付いてきて、私にはこれから起こることがなんなのか、わかってしまった。



これから始まる

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匿名さまに送ります、勘ちゃん初夢(*´∀`*)
なんかほのぼのって感じじゃなくてすみません。

これからも妄想シンデレラをよろしくお願いします。

瑞歩




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