■青天の霹靂2
6
というわけで、世にも恐ろしい席次になった。
犬猿の仲の、両者の社長を同じテーブルにもってきたのだから…。
いつケンカになるかと思うと、気が気でない。どうやらそれは長町さんも同じらしい。
しかし、当の本人はというと、ビールや酒やらをたらふく飲んで、完全に出来あがっている。
そして何と、川岸の社長、大和の社長、二人仲良くひな壇の私達の所へビールを注ぎにきた。
「こいつはなぁ、小学校の時からの、ケンカ友達なんだ。」
うちの社長が、大和の社長を指差しながら言う。
なら、なんでそんなに仲が悪いんだ。
「こいつはなー、昔から頭が良くて、わしは負けてばっかりだった。それが悔しくて悔しくて。」
と、うちの所長が言う。
「こいつは昔から女にモテて、いつも周りに女が群がっていた。それが気に入らなくてな。」
と、大和の社長が言う。
「だから、顔を合わす度にケンカしてたんだ。」
二人が声をそろえて言う。
まさか、そのいがみあいが原因っていうの?個人的な、しかもくだらない理由…。そのために、私達まで、ケンカしてたって?
私は長町さんと顔を見合わせた。そして同時に、
「ふぅ。」
と、溜息をついた。そして二人で大笑い。
いい大人が、何やってんだか。
その私達の笑い声で、社長たちが席に戻った後に、会社のほかの人達が寄ってきた。
「何?何を大笑いしてたんですか?」
十二月で退社した花緒が、興味津々で聞いてくる。
社長達のいがみあいの原因を話すと、
「くだらない…俺ら、そんな理由に振り回されていたのか。」
と有馬が言う。
話題の主はというと、仲良く肩を組んで、余興のカラオケを歌っている。
私達の苦労も知らないで…ほんと、いい気なもんだ。
でも、この様子だと、長町さんとのことで会社から文句を言われることもなくなるし、今までみたいな、余計なケンカをしなくてもすむだろう。
よかった。これで万々歳だ。仕事に打ちこめて、長町さんとも、いい夫婦関係を築けるだろう。同じ仕事して、お互いの苦労を理解し合えるから。
「よかったね。」
披露宴の後、夏樹が私に言う。
「そうだね。そんなにピリピリしなくても、仕事が出来るようになったみたいだし。」
私は帰り支度を終え、長町さん、夏樹、白石君と共に、二次会に出席する為に式場の階段を、出口に向かって降りる。そこへ、
「所長―。」
出口から有馬が叫びながら走り込んで来た。
「何?有馬。そんなに騒いで。」
「外、外。面白い事になってるよ。」
と、有馬にせかされ外に出てみると、向こうでいい大人が二人、言い争いをしている。
近くまで行くと…うちの所長と大和の社長。何?仲直りしたんじゃなかったの?
にらみ合いを続けている社長達が、私達に気付いた。そして、二人が、同時に叫んだ。
「こんな奴の会社に、何がなんでも負けるなよ!」
END
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