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■青天の霹靂2
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 親が反対とか、友達が「やめとけ」って言うとか。
 
そんなのだったら聞いた事があったけど、会社が結婚に反対するなんて何て事か。

『おお、俺も同じ事言われた。』

 電話口から聞こえてくる長町さんの声。

 やっぱりか。向こうはさしづめ、長町さんは大和に残って、私に会社を辞めろってか。

『美恵子は、仕事辞める気は無いのか?』

「何?それ。」

『いや、おまえが仕事しなくても、俺の稼ぎだけでもやって行けるぞ。』

 長町さんの言葉に、あたしはちょっとムッとした。

「辞められないのわかるでしょ。同じ仕事なんだから。」

 ちょっときつい口調で言い返した。

『そうだけどさ、女なんだからそこまで仕事にこだわらなくてもいいんじゃないか?』

  長町さんも少しきつい口調でそう言った。その言葉に私はカチンときた。

「長い間勤めてた会社が私を必要としてくれてるの。それに応えて何が悪いの?」

 ほとんどケンカ腰で言い返す。すると長町さんから返ってきた答えもケンカ腰。

『おまえ、俺と仕事と、どっちが大事なんだよ。』

 私は即答し、電話を切った。

「仕事よ!」




「『俺と仕事とどっちが大事』なんて、おまえは女か!」

 電話を切った後、切れた電話に向かって私は叫んだ。

 しばらく頭に血が上った状態で、イライラしていたが、時間がたつにつれ、冷静になってくる。

 仕方ないんだよね。長町さんにとって私が川岸にいることで立場が悪くなるんだし、男の人が会社を辞めるわけにもいかない。世間一般でいえば、私が会社を辞めるのが普通なんだろう。

 でも辞めたくないんだもん。なんだかんだ言ったって、私は仕事が好きで、会社が好きなんだ。
 
 ガソリンスタンドっていう職種がピッタリで、しかも今の職場の居心地が抜群なんだ。

 だからこれだけは譲れない。

 …でも「仕事よ!」なんて即答したのは、ちょっとやりすぎだったかな。




 次の日。仕事が終わって携帯電話を見ると、メールが一件来ていた。発信者は長町さん。

『子狸にて待つ』

 って、果たし状かい。

 子狸は、いつも行ってる居酒屋。帰り支度をして、車でその場所へ向かった。

 店に入ると奥の四人テーブルで一人で飲んでる長町さんを発見、向かいに腰を降ろした。

「ゴメン!」

 私の姿を見るなり、長町さんはテーブルに頭をつけて謝った。

「俺が悪かった。美恵子の立場も考えずに、会社に言われるまま乗せられて…。」

「もういいよ、怒って無いから。そうだよね、長町さんも大変だよね。私が川岸にいることで、立場悪くなっちゃうんだから。」

 私がそう言うと、長町さんはガバッと顔をあげて私の顔を見る。そしてほっとしたように、

「良かったぁ、許してくれないかと思ってた。」

そう言ってビールを一口飲んだ。いつも飲んでも、そんなに変わらない長町さんの顔が赤い。

「ねえ、何時からどれくらい一人で飲んでたの?」

「一時間半くらい前から…生中が…一、ニ、三、四…五杯目。」

 そう言った長町さんの目が座ってる。完全に酔っ払いだ。

 車で行った私は飲むにも飲めず、ウーロン茶で食事して、酔っ払った長町さんを助手席に乗せ、家に送って行こうとした。

「なあ、今日は美恵子と一緒に居たい。」

 隣に乗っている酔っ払いが言った。

「一緒にって…どうするの?」

「ホテル行こう。大丈夫、着いたら俺、すぐ寝ちゃうと思うから。」

 じゃあ、帰って寝ろよ。と言いたかったけど、そう言う長町さんがいつもと違ってたから、言われるまま車を運転した。


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あきゅろす。
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