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■青天の霹靂2
3

「結婚するって常務に報告したら、あからさまに嫌な顔されちゃったよ。」

 私はそう、長町さんに言った。

 私が結婚するって事にじゃなく、長町さんと、って事が気に入らないらしい。長町さんが、ライバル会社の社員、しかも激戦区の所長さんだから。

 確かに、半年前までの私だったら、長町さんとの結婚なんて考えられなかったと思う。私だって大嫌いだったから。

でも、ライバル会社だからって、一個人まで憎むことはないだろうと思う、子供じゃないんだから。

「俺も。社長がたまたま来たからさ、報告したんだけど、あんまりいい顔してなかったなぁ。」

 長町さんはそう言って溜息をついた。

「あーあ、なんでこんなに会社に振り回されるんだろう。」

 私もそう言って、溜息をついた。




 いくら会社が反対してるからといって、結婚をやめるわけにはいかない。かといって、じゃあ会社辞めます、なんては出来ないのが辛いところ。

長町さんはもちろん、あたしだって一応天神町SSの所長。
今月末で花緒が寿退社するので人手も足りない。そんな所に私まで辞めますって言ったら、それこそ会社の反感を一気に買ってしまう。

長年勤めた会社、そんな辞め方はしたくない。

 だいたい、なんでうちの社長と大和の社長は、そんなに仲が悪いんだろう。

同じスタンド経営、同じ商圏、しかも激戦区となれば、確かに相手は気に入らないかもしれない。でも、うちの社長の大和嫌いは異常だ。
いったい何の確執があるんだろう。




 数日後、社長が天神町SSにやって来た。

 きっと常務から話は聞いているだろう。報告するにも、余計言いにくい。

「おはようございます。社長、ちょっといいですか。」

 私はそう言って社長と控え室に入った。

「常務からお聞きになっていると思いますが、三月に結婚する事になりました。」

「おう、そこの大和の所長だってな。ま、おめでとう。」

 社長は淡々とした返事。

「もちろん、仕事は続けてくれるんだろ?青木君に辞められると、会社としても困るからな。」

 社長はそう続けた。
そう言ってくれるのはものすごく嬉しい。なんか必要とされてるって感じで。

「はい。そのつもりです。」

 私が答えると社長は笑って、

「青木君は頼り甲斐があるな。これからも頑張ってくれよ。」

そう言った。そしてその後、

「で、相手の奴も、仕事続けるつもりなのか?」

 そうでしょう。男の人が結婚退職って、私は聞いた事がないぞ。

「そうだろうなぁ。いや、会社として、同じ家に大和の社員がいるっていうのは、あまり歓迎できんからな。せめて、他のスタンドだったら良かったんだが…。」

 社長はお茶を濁すような言い方をする。

何?つまり大和に情報が漏れるのが嫌だから、長町さんに会社を辞めろ、と言いたいわけね。
そんな無茶な。

「ま、はっきり日取りとか決まったら、また報告してくれよ。とりあえず、おめでとう。」

 社長はそう言って帰っていく。

 反対こそしないけど、賛成できない…ってとこか。



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あきゅろす。
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